DREAM17 磁器彫刻家 森永 英一郎(もりなが えいいちろう)さん

ページ番号1007337  更新日 令和2年10月26日

美術で人々の生活を豊かに

中学生時代を過ごした春日市に工房を構え、磁器に彫刻を施し、作品を生み出している「英一郎製磁」の森永英一郎さん。陶芸家の母の下、幼い頃から自然と造形を好み、今では磁器彫刻を「使命のようなもの」と表現します。

場所や時代にかかわらず、人の心を動かし、喜ばれる作品をつくりたいという森永さんに、これまでの経験や、磁器彫刻に対する想いを聞きました。

写真:インタビューを受けた森永さん

育った環境が自然と今の状況へと導いた

磁器彫刻家になったきっかけは

母は波佐見焼の窯元の生まれで、40年以上陶芸家として活動していました。ずっとその姿を見て育ったので、造形に携わることは僕にとっては自然なことだったと思います。

小さい頃は画家に憧れ、高校生になると自動車などの立体的なものに興味を持ち、インダストリアル(工業)デザイナーを夢見ていました。しかし、ある日手にした本で見たギリシャ彫刻の美しさにひかれ、大学は美大の彫刻学部に進学しました。

これらの生い立ちが磁器彫刻家としての今の自分につながっています。この肩書を名乗っている人はほとんどいないと思いますが、僕の場合は、窯元の家に生まれ、磁器を素材にして彫刻家を志しているという意味合いも込めて「磁器彫刻家」としています。

大学卒業後はどのようなキャリアを積んできたのですか

本格的に陶芸・彫刻をなりわいとして始めたのは30代後半からで、結構遅いスタートなんです。大学時代から20年間東京で生活していて、その時期は音楽活動を中心にしていました。バンドを組んだり、ソロで活動したり。芸能事務所に所属していたこともありました。しかし、元々やりたかったこの仕事を始めると、忙しくなって音楽活動は縮小しました。「歌う陶芸家」と名乗っていた頃もあります(笑)。磁器彫刻に本腰を入れてからは春日市に戻り、母が自宅に併設した工房を共同で使用し、創作活動に取り組んで来ました。

焼物の技術はお母さんから学んだのですか

もちろん母から学んだこともありますが、自分自身でもたくさんの知識や技術を学びました。長崎県に窯業技術センターという訓練所があり、そこへ行って学んだり、長崎県波佐見町に行って原型師の技術を横で見て習得したりしました。波佐見町には親戚や知り合いが多いので、今でも製作出張をすることがよくあります。

磁器彫刻家として春日市に期待することはありますか

春日市は静かで過ごしやすく、創作の環境としてとても良いです。近くに市民図書館があり、美術関係の本もたくさんあるので、昔から書庫のように通っています。また、住宅都市のイメージが強いですが、意外と事業所などもあるので、美術関係者や作家さんなどももっといていいのかなと思います。今は商工会を通した地域の人とのつながりはありますが、春日市内の陶芸家とのつながりはほとんどありません。芸術や文化的なつながりも、もっと活発になると良いですね。

写真:森永さんの作品
サクラの花が咲く「骨壺」

新しいものを生み出す

磁器彫刻の魅力は

新しいものを作ること、いわゆる「創作」は楽しいです。頭にふと浮かんだものをとりあえず描いてみることからスタートします。作ろうと思っているものをよく見て、分解して、描写する。割れやすい焼物では、その対象物をそのまま表現することはできないため、誰が見てもそれに見えて、かつ美しい形に再構築する力も必要です。植物や動物など、形が違うものを作ったとしても、そこには共通する普遍的な美があります。その美は頭の中だけでは生み出せないため、まずは観察する力をつけて美を抽出する技術を磨いています。

これまでに苦労したことは

僕は一般的な焼物とは異なる形状の作品を作っているので、それに由来する失敗はたくさんあります。焼物の特性上、僕が作っているような細くて繊細なものはどうしても割れやすい。とはいえ、失敗したとしても、作らないといけないので、落ち込む暇もなくとにかく手を動かします。

作品はどのように販売しているのですか

展示会やインターネットでの直販が中心ですが、今は新型コロナウイルス感染の影響で展示会に出展する機会が減っているので販売方法を考えないといけないですね。本来、焼物は手に取ってその価値が伝わるものなので、より大きさや質感が分かるように動画で作品を紹介していこうと考えています。美術品は景気の波によって消費傾向が変動しやすく、注文が減っているのも事実です。でも、コロナが終息した後も家で過ごすことの価値は再発見されていると思うので、生活を少しでも豊かにできるものを提供していきたいです。

 

写真:工房で作業する森永さん
工房では好きな音楽を流しながら作業することも

好きなことにはとことん時間を使ってみる

今後の夢は

現在は同じ作品を何回も作っていますが、彫刻家として「一回性」の作品を作り、表現としての作品を世に出していくこと。作品一つ一つにストーリーを刻み、手に取った人が喜んでくれる。そういった創作活動をしていくことが僕の夢です。そして、先代からの陶芸家としてのルーツを継承しつつも、自分自身が確立した「磁器彫刻家」というスタイルを極めていくこと。それが僕の使命だと思っています。

最後に、市民の皆さんへメッセージをお願いします

特に子どもたちに伝えたいのですが、なるべく早い段階からいろんなものに興味を持ってほしいですね。好きなことを見つけたら、覚悟を持ち、時間をかけてそれを一生懸命にやってみる。それで「合うな」と思えばどんどん自分のものにしていけばいいと思います。ぜひ時間や労力を使って経験してみてほしいです。

プロフィール

福岡県春日市立春日中学校出身。彫刻と陶芸を融合した独特の世界観を特徴とし、福岡デザインアワード入賞(複数回)、長崎県陶磁器展入賞(複数回)、萬古焼陶磁器コンペ優秀賞など、数々の賞を受賞している。

写真:工房の外観

夢サポート

春日市民図書館(福岡県春日市大谷6-24)

蔵書数は33万8000冊(うち美術作品は1万6000冊)。朗読会などのイベント開催や、電子図書館、本の郵送サービスも行っています。

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