DREAM14　子どもの本の専門店「エルマー」代表　前園　敦子（まえぞの　あつこ）さん

地域に根付き、親子の居場所を提供する

開業31年目を迎える子どもの本の専門店「エルマー」。店主の前園さんは誰に対してもいつも笑顔で、店内は本を買いに来たり、遊びに来たりする人たちとの笑い声が絶えません。書店の経営以外もさまざまな活動を行っている前園さんは、どんな思いを抱いているのか。過去から現在、そして未来につながる話を聞きました。

子育てに思い悩む私を救ってくれた「本」

私自身が、若くして出産したので、子育てにすごく悩みました。良いお母さんにならないといけないと思い育児書を読んだのですが、もちろんそのとおりにはなりません。それに、近所に同じくらいの子どもを持つお母さんもいたのですが「こんなこと聞いていいのかな」と悩みを打ち明けることができませんでした。

そんな状況の中で「子どもに本を読んであげると学力が上がる」と聞き、子どもにたくさん本を読んであげるようになりました。それで、ふと気付いたんです。本を読んであげると、私自身の心が温かくなる、と。私が本に救われたんです。その後、目の前の子育てが大変なお母さんたちに、私は何ができるだろうと考えた結果、本に救われた自分の経験を生かしたいと思い、エルマーを開業しました。

立ち上げ当初から、地域に根差した本屋にしたいと思っていました。子どもたちやお母さんたちの居場所になればいいな、と。喜びも悲しみも共有しながら「大丈夫だよ」と声を掛けたいと思っていたので、それがかなって毎日楽しいです。

以前、経営的に店を閉めないといけないかもしれないと思っていた時期があって、同じ時期に複雑な家庭環境の子が毎日来てくれていたんです。そのことを伝えると「じゃあ私はどこに居たらいいの」とその子に言われたんです。それを聞いて、私はこういう子たちを受け止めないといけないと改めて思いました。

今では、子どもたちがここで宿題をしたり、たまり場にしたり、憩いの場になっていると思います。

本の力を広める活動へ

本の力を伝え広めていくために、常にいろいろなイベントを企画しています。そのうちの一つである「語りの会」では、伝統的な「語り」を伝承していくために、メンバーでいろいろなところに読み聞かせに出向いています。春日原地区公民館で開かれたコミュニティ食堂で本の読み聞かせをしたこともあります。また、福岡県が主催している「絵本コンシェルジュ」の講師や大学での講義など、繁忙時には月の3分の2は店外での活動に費やしています。

私、常にプラス思考なんです。昔きつかった時期に「私だけではない、みんなそうなんだ」とふと思えた瞬間があって、そう思うと気持ちが随分楽になったんです。また、私がプラス思考になることで、子育て中のお母さんに「大丈夫だよ、みんなそうだよ」と声を掛けられるようにもなりました。さらに、そうすることで、いろんな人が助けてくれるようにもなりました。私は本屋なので、本が売れればいいなとは思いますが、それ以外のことには営利を求めていません。それは、基本的にはエルマーを始めるときに描いていた、「地域に根差してみんなで楽しいことをしたい」という思いのままです。

何度でも挑戦することが大事

夢を持つことは絶対に大事です。挫折することもあると思いますが、やり方は1つだけではないので、いくらでも再挑戦すればいいんです。頑張ったけど駄目だったなというときには「じゃあ他の方法でやってみよう」といろいろと試してみてください。挑戦することで、だんだん夢へと近付いていけると思いますよ。

どういう本を読むべきか迷ったらエルマーに足を運ぶことを選択肢の一つとして考えてみてください。本を紹介することはもちろんですが、子どもたちにとっては本が「心の友達」になると思っています。心の友達をたくさん持ってほしいので、友達づくりのお手伝いをしたいと思っています。皆さんと会えるのを楽しみにしています。 

プロフィール

春日市子ども文庫・読書サークル連絡会初代会長。同会で、読み聞かせなどの読書推進活動を行っている。

夢サポート　移動図書館「たんぽぽ号」

約3,000冊の本を車に載せて、春日市内19カ所を巡回しています。春日市民図書館の本やビデオ・CDの予約・返却もできます。運行スケジュールは、春日市民図書館ウェブサイトで確認するか、問い合わせてください。

問い合わせ先

春日市民図書館

電話：092-584-4646

• 春日市民図書館ウェブサイト（たんぽぽ号）（外部リンク）