しろうず(白水)

ページID:1011651  更新日 令和5年12月5日

漢字で「白水」と書く地名は日本各地にあります。江戸時代の村名だけで見ても、鹿児島県喜界島の白水(しらみず)村から秋田県白水沢(しろみずさわ)村(現五城目町)まで、13 ほどあります。江戸時代からのむらではありませんが「はくすい」と呼ぶ村が熊本県南阿蘇村、菊陽町にありました。この2村は明治22年の村々の合併によって成立した新しい村名です。

熊本県水上村、岡山県美作市、福島県いわき市にあった白水村は「しらみず」と呼び、鳥取県伯耆町の白水村は「しらみ」、山形県東根市の白水村は「しろみず」です。これらは山の中、谷あいにある村々で、川が滝となったり、流れが速く水が白く沸き立つ様子を表しているのでしょう。

鹿児島県鹿屋市の白水(しろみず)村は高隅山系の裾部、神戸市西区の白水村は六甲山地の裾部、秋田県五城目町の白水沢村は、高岳山・森山の山麓にあり、春日市の白水(しろうず)と似た環境にあるので湧水と関係するのでは思っています。砂を巻き上げながら地下から湧き出す泉は、透明で清らかです。それを白水と表現したのでしょう。

白水は「しろみず」か「しらみず」と読むのが普通です、村名で「しろうず」と呼ぶのは春日市だけです。「しろうず」は村の中の小地名字を含めても非常に珍しい地名です。現在まで、白水を「しろうず」と呼ぶのは、調べた限りでは、大分県竹田市の旧神原村の神原川の川沿いの山間部の白水だけです。

山口市の北方の山間部の仁保上郷に白水川(しろうずいがわ)があり、字として白水大上(しろうずいおおうえ)、白水大下、白水長通があります。ここの白水は「しろうずい」といいます。なぜ「い」がつくのか、方言なのか、よく分かりませんが、春日の白水とよく似た地名です。

明治時代に福岡県の字名を調査した「明治十五年字小名調(あざこなしらべ)」という資料があり、嘉麻郡上三緒村(現飯塚市)にシロヲズという字が載っています。県内にも春日と同じ「しろうず」があったと思い現地に行って調べたところ、「四郎須」と書き、湧水や白く泡立つ急流の川とは全く関係ありませんでした。日本語の難しさと地名の幅広さを思い知りました。宗像郡赤間の旧田久村(現宗像市)にも白水「しろず」という字がありました。現在は団地になっており、残念ながら旧地形を見ることはできません。古い字を描いた図面から現地を見ると、丘陵に切り込んだ谷の一番深い所なので、水が湧き出していそうな場所です。地元の人に聞いても何も分かりませんでした。

春日に住む私たちは、白水を当然の地名として「しろうず」と呼んでいます。しかし、一般的には「しろうず」と読むのは簡単なことではありません。非常に珍しい地名です。

春日市郷土史研究会 寺崎 直利(てらさき なおとし)

(市報かすが 平成30年7月15日号掲載)

写真:バス停のあった場所
白水がつく最北の秋田県五城目町白水沢(道の右手にかつて白水沢のバス停があった)

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