原(ハル・バル)

ページID:1010932  更新日 令和5年12月5日

九州では「○○原」の原を「バル」と言います。私も何の疑いもなく使っていました。

以前、滋賀県に行って「米原駅」を「マイバル駅」と尋ねたところ、知らないと言われました。滋賀県で唯一の新幹線の駅ですので、知らないはずはありません。 その時初めて、米原は「マイバラ」と読み「マイバル」ではないことを知りました。 原を「ハル、バル」と呼ぶのは九州と沖縄地域の特徴です。沖縄本島から遠く離れ、 台湾のすぐ近くの与那国島まで「バル」ですが、不思議なことに、九州と狭い海峡を挟んだ下関では「ハラ」と読みます。

春日市の字名を見ると旧春日地区で前ノ原(まえのはる)、中ノ原(なかのはる)、先ノ原(さきのはる)、塚原(つかばる)、旧須玖地区では上ノ原(うえのはる)、旧上白水地区で原(はる)、下ノ原(しものはる)、原田(はるだ)、旧下白水地区で浦の原(うらのはる)、六郎原(ろくろうばる)、下ノ原(しものはる)、原田(はるだ)など全てハル、バルといいます。

ハルは何を意味するのでしょう。さまざまな考え方がありますが原野としての原(ハラ)をハルと読み、またハル(治る、懇る)という語義に通じ、「民俗地名語彙(ごい)事典」によると荒野や開墾地名ではないかとしています。

春日で一番有名な地名は春日原です。江戸時代の貝原 益軒(かいばら えきけん)が書いた地誌「筑前国続風土記」に「東西十二町、南北十二町許有て平原也」、「其地黒土にて性あしき故に、五穀によろしからず、故田圃(たんぼ)まれなり」とあり、ハル、バルの性質をよく現わしています。

台地状の荒野や開墾地名の「ハル」を「原」にあてたため、本来は「ハラ」と言っていたものまでが、「ハル」に変わった所もあるようです。この場合の「ハラ」は「原っぱではなく、場所あるいは村落を意味する」(前掲語彙事典)とされます、そのため水田地域であっても「ハル」に変わった地名が考えられます。旧下白水地区の六郎原は平坦地であり、その例ではと考えています。

地名としての原はなかなか難しいものです。

春日市郷土史研究会 寺崎 直利(てらさき なおとし)

(市報かすが 平成28年11月15日号掲載)

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