魚ノ目
ページID:1010928 更新日 令和5年12月5日
字(あざ)の名称の付け方に基準は無く、さまざまな名前が残っています。魚に関する地名はありますが、数多いとは言えません。その中で多いのは鯰田(なまずた)や鯰迫(なまずさこ)など鯰の付く名が旧筑前地域に9カ所あります。それに次ぐのが鯉で6カ所です。身近な淡水魚が多く生息していたり、鯰や鯉の目立っていたところが地名となったのでしょう。
市内の小倉地区に「魚ノ目」という珍しい字があります。旧筑紫郡内では魚に関する地名は少なく、ここの1カ所です。場所は現大和町の陸上自衛隊第四師団司令部正門前から東南側の一帯です。
旧筑紫郡内では魚のことを「ウオ」ではなく方言で「イオ」と言います。現在は「ウオノメ」と呼びますが、以前は「イオノメ」と言っていたのではないかとも考えられます。この辺りが魚に関係するものがあったとか、魚が多くいたとかいった話は全くありません。また、土地の形が魚に似たものでもありません。
明治10年代に、字の名称を県に届けるとき、それまで村の中で発音だけで通っていた地名を、平仮名で、もっともらしく漢字に置き換え届け出たことが多かったようです。
この時「イオ」を「魚」にあてた可能性があります。このことから魚と関係ない「イオ」や「ウオ」を考えなくてはなりません。
漢字から地名の起源を考えるのは非常に難しいことです。「目」は想像がつきます。地名で目は窪地を指すとされます。
大和町一帯は沖ノ川(現在暗渠(あんきょ)で自衛隊基地内を流れる)と、へちご川(福岡市との境を流れる)に囲まれた低い土地です。
1970年ころまでは、雨が降ると福岡市に近い一帯はよく洪水になっていました。
この土地の条件と地名の「目」はよく一致します。つまり「イオまたはウオの凹地」という意味です。
「魚ノ目」という地名は、他には福岡市西区宮浦(みやのうら)にあります。ここは海岸沿いで、春日市小倉の宮浦とは条件が異なります。
春日市郷土史研究会 寺崎 直利(てらさき なおとし)
(市報かすが 平成28年5月15日号掲載)

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