白水の湧水

ページID:1011650  更新日 令和5年12月5日

古事記では、日本は「豊葦原水穂(瑞穂)国(とよあしはらのみずほのくに)」とうたわれています。豊かな水田と稲の実る国という意味です。我が国はどこに行っても水があります。雨が多く、森に覆われているため、谷あいから染み出す水を集める小河川は多く、地中から染み出す湧水は各地に見られます。ヨーロッパの平野を列車で走ると、川は少なく、日本のように丘陵があればその山裾に必ず小河川があるような風景は見られません。小さな橋を繰り返し渡ることはなく、ただ平原の中を走っていく。乾燥地帯とモンスーン地帯の差でしょう。この湿潤な風土こそ我が国の特徴と言えます。

調査をしたところ、現在全てを見ることはできませんが、市内の湧水は春日地区に1つ、上白水地区に4つ、下白水地区に1つありました。上白水地区にあった湧水は「しょうず」と呼ばれていました。湧水に関する地名がたくさん残り、湧水が人々にとって身近なものだったことが分かります。

イズミ(泉・和泉・出水)、シミズ(清水・志水)、ヒヤミズ(冷水)、シラミズ・シロミズ(白水)、キヨミズ(清水)、デミ(出水)、ショウズ(生水・清水・寒水・正水・小水)、ソウズ(草津・寒水・象頭)。これらは湧水や水に関係する地名です。最も一般的なシミズは清らかな水、人にとって大切な水の尊称でしょう。ショウズは水の生まれ来るところ、水の湧き出す様の表現であり、湧水のある所に多い地名です。ソウズは朝倉地域から大分県に多い地名で、意味はショウズと同じです。明治22年の町村制施行まで上座郡寒水村(現朝倉市)、下座郡寒水村(現朝倉市)、夜須郡草水村(現甘木市)があり、大分県でも寒水村(現宇佐市)、早水村(現竹田市)などがあり、全てソウズと読みます。ショウズが方言としてソウズになったのでしょう。

寒水という文字からはショウズと読めないものですが、古くからの地名のようです。佐賀県寒水村(現鳥栖市)は鎌倉時代から見える村名です。湧水の水温が一定であり、特に気温が高い時期には冷たいので、この字をあてたのでしょう。

春日市のショウズは湧水の場所を村人が呼び慣わした言葉であり、文字としての生水は文献には出てきません。この湧水は上白水地区の重要な水源の一つでした。干害の時も枯れず、安定して水田を営める水を持つことが、鎌倉初期より荘園白水庄を成立させる要因の一つであったと思われます。

春日市郷土史研究会 寺崎 直利(てらさき なおとし)

(市報かすが 平成30年5月15日号掲載)

写真:木が茂る白水ヶ丘5丁目付近の様子
白水ヶ丘5丁目付近 昔は丘陵の下から湧水が見られた

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