惣利

ページID:1010931  更新日 令和5年12月5日

惣利(そうり)は、1丁目から6丁目まで春日市の南部、牛頸川(うしくびがわ)の左岸に広がっています。住居が建てこみ、地区の中央を通る白木原から那珂川方面への「春日南通り」沿いには店舗が並び、にぎやかなところになっています。惣利という地名は大字(おおあざ)春日の中にあった字(小字)に由来します。字惣利は広く、現在の住居表示で言えば惣利地区のほか春日6丁目、8丁目から10丁目まで含む地域です。

春日市の惣利は日本の地名を調べた人にとっては有名なところです。日本民俗学を確立した柳田 国男(やなぎた くにお)は初めて地名を学問として扱いました。柳田国男の「地名の研究―地名考説」の反町(そりまち)の項で「筑前筑紫郡春日村大字春日字惣利」として紹介しているからです。反町や双里(そうり)などのソリ、ソウリと呼ぶ地名は、全国に分布し焼畑や休耕を伴う畑のことだろうと指摘しています。

明治中頃、内務省地理局が調べ全国の字を集めた「字名集」というものを編さんしました。保管していた東京大学の一つの教室が埋め尽くされる程膨大な記録の量だったといいます。ただし大正十二年の関東大震災で全て焼失してしまいました。柳田は明治末頃、内閣書記官記録課長の職責を利用し、字名集に目を通して地名の重要性に気付きました。その時、春日の惣利を知ったと思われます。恐らく現地には来ていなかったでしょう。

惣利は昔の地図を見ると大牟田池や春日貯水池に連なり、ほとんどが標高60m前後の起伏のある丘陵地です。ここで焼畑が行われていたとの伝承はありませんが、なんとなく納得できる地形をしています。伝承も消えた遠い時代の記憶が地名に残っている例かもしれません。

春日市郷土史研究会 寺崎 直利(てらさき なおとし)

(市報かすが 平成28年9月15日号掲載)

このページに関するお問い合わせ

文化財課 整備活用担当
〒816-0861
福岡県春日市岡本3-57
奴国の丘歴史資料館1階
電話:092-501-1144
ファクス:092-573-1077
文化財課 整備活用担当へのお問い合わせは専用フォームへのリンク