十四日のモグラ打ち

ページID:1013122  更新日 令和5年12月5日

「十四日のモグラ打ち」は、1月14日に行われていた九州地方の伝統行事です。春日市内でも60年ほど前までは行われていましたが、今ではほとんど見られなくなりました。

モグラ打ちもそうですが、そもそもモグラそのものを見かけることも少なくなりましたね。モグラは10〜15㎝程度のネズミのような生き物で、土の中で生活しています。大きな前足で地中にトンネルのように穴を掘り、ミミズや昆虫の幼虫を食べます。そのため、畑に穴ができて作物が枯れたり、水田の畔(あぜ)から水が流れ出て畔が崩れてしまったりと、農家にとっては害獣とみなされました。つまり「モグラ打ち」とは、田畑を荒らすモグラを追い払うために行っていた作業が転じて、五穀豊穣を祈る儀式となったものなのです。

モグラ打ちの主役は、子どもたちです。1月14日の夕方になると、各家の門口(かどぐち)から子どもたちの大きな声が響き始めます。

”じゅーよっかーのモーグラ打ち、隣のカドさいもっていけぇ“

子どもたちは、このように大声で唱えながら、稲藁(いねわら)を固く巻きつけた竹の棒で、地面を思いきり叩きます。自分の家が済むと、子どもたちは組になり、近所の家の門口で地面を叩いて回り、お礼に餅をもらいました。

モグラ打ちが終わると、竹の棒を2つに折り、自宅の庭の柿の木に掛けておきました。柿の木がない家は、ミカン、梨、桃など実のなる木に掛けました。これは、モグラ打ちの音がドスンドスンと鳴るように、果物がよく生ることを願ってのおまじないだったそうです。

モグラ打ちは、昔の春日市の1月14日の風物詩でした。小倉地区の「嫁ごの尻叩き」もこの日に行われますね。春日地区の「婿押し」も、今は変わってしまいましたが、昔は1月14日に行われていました。なぜ、1月14日なのでしょう。

元旦や元旦からの7日間を大正月(だいしょうがつ)というのに対し、1月15日を小正月(こしょうがつ)といいます。旧暦の月は新月から始まりますが、この旧暦は中国から伝わったものです。それまでの日本では、満月を月の始めとする暦を使っていました。旧暦の1月15日は、1年で最初の満月の日であり、実は昔の日本の正月だったのです。その名残が、小正月という形で残ったものと言われています。

そして、1月14日は小正月の前日。現在の大晦日と同じように、「十四日年越し(じゅうよっかとしこし)」として祝いました。モグラ打ちも、小正月の前日に新しい1年の豊作を祈る行事として、行われていたのかもしれません。

春日市郷土史研究会 平田 善積(ひらた よしづみ)

(市報かすが 令和4年1月15日号掲載)

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