七夕節句

ページID:1013097  更新日 令和5年12月5日

ささの葉 さらさら

のきばにゆれる

七夕といえば「たなばたさま」。教科書にも載っている、誰もが知っている歌ですが、この「のきば」とは何か知っていますか。「のきば」は漢字では「軒端」と書き、家の屋根が壁より突き出ている部分のことを言います。つまりこの歌詞は、家の外に飾った笹の葉が、屋根の端で揺れている様子を歌っているのです。

七夕は、もともと中国の七夕伝説に由来しています。天の川を隔てて引き離された織女(しょくじょ)と牽牛(けんぎゅう)が、1年に1度、七夕の夜だけ逢うことを許されたというものです。日本では織姫(おりひめ)、彦星(ひこぼし)と呼ばれますが、実際に天の川を挟んで向かい合うように、織姫と彦星の星があります。

本来の七夕は旧暦の7月7日で、新暦では8月14日頃になります。つまり、昔の七夕は、初秋の澄み切った夜空に現れる天の川と2つの星を仰ぎ見る行事だったのです。そのため、七夕のことを「星まつり」とも言います。新暦の7月7日は梅雨の時期にあたり、星を眺めることさえできないことも多く、寂しい限りです。

七夕の行事と言えば、短冊に願い事を書いて、笹に飾り付けた思い出がありませんか。現在でも、幼稚園や地域の子ども会などで「七夕まつり」や「たなばた会」などが行われているようです。しかし、七夕は、昔は農事や日常生活と強く結びついたものでした。

今回は七夕にちなんだ昔の行事や慣習をいくつか紹介します。

  • 七夕節句
    キキョウやオミナエシを採り、床の間に飾っていた。
  • 竹竿つくり
    「七夕に作った竹竿は虫がつかない」とされ、竹を切って竿などを作っていた。
  • 洗い物
    「七夕に洗い物をすると、よく垢が落ちる」とされ、神具や仏具を洗ったり、女性が髪を洗ったりしていた。
  • 田褒め
    田んぼにお神酒(みき)をまきながら、「よかお田ね」と陣の稲田を褒めていた。
  • 井戸さらい
    「七夕節句の井戸サラエ」といい、井戸に降りて掃除をすませ、塩をまき、お神酒を注いだ。
  • 習字
    「七夕に習字をすると字が上手になる」とされ、子どもたちが稲の露で墨をすり、練習した。
  • 虫追いごもり
    田んぼの害虫を払い、豊作を祈願するため、子どもや青年が鉦(かね)や太鼓を鳴らしたり、宮にこもったりした。

農事はもちろんですが、天の川にちなんだからなのか「水」に関するものも多いようです。このような行事や慣習は昭和30年ごろまで続いていましたが、都市化や生活様式の変化により、地域から姿を消しつつあります。

そういえば、最近では「のきば」のある家も、珍しくなってきたように思います。

春日市郷土史研究会 平田 善積(ひらた よしづみ)

(市報かすが 令和3年7月15日号掲載)

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