牛頸川(3)清流いまむかし

ページID:1010919  更新日 令和5年12月5日

平成26年3月の下旬、春日公園の桜がやっと開花する頃のことでした。私は所用で、バイクに乗って春日原の方から春日公園南側の牛頸(うしくび)川に架かっている公園前橋を渡り、そのまま川に沿って春日橋近くまで来ました。

すると橋の少し手前で、手に手にカメラや三脚を抱えて、川ふちをのぞきこんでいる人たちに気が付きました。その数30人は超えていたでしょう。私は、てっきり何か事件が起こって報道関係者の取材だと思いました。バイクを近くに置き、そっと人垣に割り込みました。カメラマンの視線を追いながら、「何が起こったんですか」と、見物人の一人に尋ねました。

ところが思いもしない返事に驚くばかりでした。何とカメラを持っているのはアマチュアカメラマンで、カワセミの飛来を今か今かと待ち構えていたのです。

「カワセミ」と聞いて、私は自分の耳を疑いました。カワセミといえば、「渓流の宝石」というではありませんか。川のそばまで人家が迫り、川沿いの道路には車の往来が絶えない住宅街にカワセミがいるなど信じられなかったのです。

「あそこの木の枝先に止まっているでしょう。あれです。下くちばしが赤いから雌です。雄のくちばしは、上下とも黒いです」。カメラマンの奥さんとおぼしい人が教えてくれました。

カワセミが居着いているということは、牛頸川の下流も渓流並みの環境と水質を取り戻したのでしょうか。

戦後のある時期、全国的に農薬の使用や土地開発などで一時期河川が汚染されて、川の生物やそれに依存する川べりの鳥獣の激減が問題になったことがあります。

牛頸川を管理する福岡県那珂土木事務所によると、カワセミとの関係は分からないとしながらも、一般に川の水質や河川環境は、下水道整備や住民意識向上、行政の働きかけによって、一時期に比べ格段に向上しているということです。

今後とも牛頸川が、さらに多様な動植物生育の場となり、またいつまでも地域の人々にやさしい親水環境であってほしいと願っています。

春日市郷土史研究会 平田 善積(ひらた よしずみ)

(市報かすが 平成27年6月15日号掲載)

カワセミのイラスト
カワセミ
写真:牛頸川
春日橋から牛頸川を望む(右上の白い建物は消防署)

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