牛頸川(1)川と溝
ページID:1010917 更新日 令和5年12月5日
「春日市には溝はあっても川はない」。これは元春日市長の亀谷 長榮(かめや ちょうえい)さんから聞いた言葉です。地理的には「春日市に川がない」といえば間違いになりますが、地政学的にはこれほど春日市の水事情をうまく表現した言葉はないと思います。春日町、春日市の行政に長く携わった亀谷さんの、農業用水問題や飲料水確保での苦労がしのばれます。
では、市内を流れる川と溝の実際はどうでしょうか。「春日市史」に、「春日市には、牛頸川(うしくびがわ)・諸岡川(もろおかがわ)・川久保川(かわくぼがわ)があり、また丘陵地(きゅうりょうち)には多数のため池が点在し、これらが互いに連なって水系(すいけい)を構成していた」と記述されています。
溝というのは、川と川、または川とため池などを人為的につなぎ合わせるために造成された導水路(どうすいろ)のことをいいます。そこで川久保川についていえば、名前は「川」ですが、水源が寺田池で、自然発生流路ではないので、川ではなく溝の部類に入ります。
資料は大正13年と少し古いのですが、「春日市史」によると、春日市域の水路の総延長は123kmで、そのうち川の部分は、牛頸側が2.8km、そして諸岡川が3.1kmで残りの117.1kmが、いわゆる溝ということになります。春日市での溝の長さは川の実に20倍ということになります。
春日市域の農民は、昔水不足に泣きました。しかし、のちに水の恩人と称えられる武末 新兵衛(たけすえ しんべえ)と、白水 喜四郎(しろうず きしろう)という2人の偉人が出て、今では、ため池の数は県下屈指の密集度を誇っています。春日市に人為(じんい)による水路、すなわち溝が多いのはそのためです。
さて、本題の牛頸川のことですが、その最も古い記録は、明治13年に完成した「福岡県地理全誌」の中にあります。春日村の条に、この牛頸川のことは「春日川」と書かれ、その川は「南、御笠(みかさ)郡牛頸村より流れ来たり、村の東を過ぎて、また御笠郡瓦田(かわらだ)村界に入る。長さ、1500間、幅5間。平水3寸。満水5尺」(1間=約1.8m、1尺=約30cm)と記述されています。
春日市郷土史研究会 平田 善積(ひらた よしずみ)
(市報かすが 平成26年12月15日号掲載)
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