住民監査請求の監査結果について(令和3年4月8日付け03春監監第12号)
ページID:1008699 更新日 令和5年5月24日
住民監査請求の監査結果について
令和3年2月15日付けで受理した住民監査請求の監査結果を、請求人(5人連署)宛で、地方自治法第242条第5項の規定により別紙のとおり、令和3年4月8日付け03春監監第12号により通知しました。
1 監査請求人
請求人 5人(いずれの請求人も住所を春日市内に有するものである。)
請求人ら代理人弁護士 3人
2 監査請求の要件審査
本件監査請求(以下「本件請求」という。)は、令和3年2月9日付けで提起され、同日受付し、審査の結果、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第1項及び第2項に定める要件を具備しているものと認められたので、令和3年2月15日に受理を決定した。
3 監査請求の内容
(1) 監査請求の趣旨(「住民監査請求書 監査請求の趣旨」原文のまま記載)
ア 春日市は、春日市長井上澄和が西日本鉄道株式会社との間で行った別紙契約目録記載の土地交換契約が地方自治法237条・238条の4及び春日市の「財産の交換、譲渡、無償貸与等に関する条例」に違反するものであるとしてこれを取消す、もしくは無効なものであることを確認したうえで必要な施策を講ずるべきである。
イ 春日市は、春日市長井上澄和が行った違法若しくは不当な別紙契約目録記載の土地交換契約締結により春日市が被った1億9,581万9,994円の損害を補填するため、同市長に対し、同額の損害賠償の請求を行うべきである。
ウ 春日市は、春日市長井上澄和が行った違法若しくは不当な別紙契約目録記載の土地交換契約締結により春日市が被った別紙物件目録1-(1)ないし(28)記載の土地の文化財保護法により必要とされる発掘本調査費用相当額である1906万円の損害を補填するため、同市長に対し、同額の損害賠償の請求を行うべきである。
エ 春日市は、春日市長井上澄和が行った違法若しくは不当な別紙契約目録記載の土地交換契約締結により春日市が被った別紙物件目録1-(1)ないし(28)記載の土地の廃棄物撤去費用相当額の損害を補填するため、同市長に対し、同額の損害賠償の請求を行うべきである。
との監査を求める。
(2) 監査請求の理由(「住民監査請求書 監査請求の理由 第1」原文のまま記載)
ア はじめに
(ア) 請求の対象となる機関、職員
請求の対象となる機関、職員は、春日市長井上澄和である。
(イ) 対象となる財務会計行為
対象となる財務会計行為は、次の契約の締結、履行である。
春日市長井上澄和(以下「井上市長」という。)は、春日市を代表して、令和2年3月31日、西日本鉄道株式会社(以下「西鉄」という。)との間で、別紙物件目録1-(1)ないし(28)記載の土地(以下「本件白水ヶ丘の土地」という。)と同2記載の土地本件(以下「本件平田台の土地」という。)を交換する契約を締結、履行した(甲1)。この契約の締結、履行が本件対象行為である(以下、「本件交換」という。)。
(ウ) その行為が、違法または不当であるとする理由、並びに春日市にどのような損害を与えたのかは、後記第2、第3記載のとおりである。
(エ) どのような措置を要求するのか。
春日市は、井上市長に対し、監査請求の趣旨1記載の施策を講じ、あるいは、同2ないし4記載の損害賠償の請求を行うべきである。
(3) 事実証明書
ア 甲号証写し
4 監査の実施
(1) 監査対象事項
監査請求の内容及び要件審査の結果を総合的に勘案し、監査対象事項を次のとおりとした。
ア 春日市長(以下「市長」という。)と西日本鉄道株式会社(以下「西鉄」という。)との間で行った市所有の土地(春日市平田台5丁目1番2。以下「本件平田台の土地」という。)と西鉄所有の土地(春日市白水ヶ丘6丁目122番ほか27筆。以下「本件白水ヶ丘の土地」という。)の交換契約が地方自治法第237条及び第238条の4並びに市の財産の交換、譲渡、無償貸付等に関する条例(昭和39年条例第13号)に違反する旨の主張について
イ 担当部長の本件交換手続に関する説明に疑問点がある旨の主張について
ウ 市長や担当部長が本件土地交換に関し議会に報告・説明せず、逆に隠蔽していたことが不当である旨の主張について
エ 本件土地交換契約が違法なものであり、市は市長に対する損害賠償請求権を有する旨の主張について
(2) 監査対象部署
健康推進部健康スポーツ課
(3) 請求人による陳述
地方自治法第242条第7項の規定に基づき、令和3年2月22日、監査請求人及び請求人ら代理人弁護士に証拠の提出及び陳述の機会を設け、監査請求人及び請求人ら代理人弁護士から請求の趣旨及び理由について補足説明を受けた。
(4) 監査対象部署に対する監査
監査に当たり、健康推進部健康スポーツ課に監査対象事項に係る関係書類、監査請求人の主張に対する弁明書及び関係資料の提出を求め、その提出を受けて審査を行った。
5 監査の結果
(1) 主文
本件請求を棄却する。
(2) 理由
ア 関係法令
(ア) 地方自治法(以下「法」という。)第96条、第149条、第237条及び第238条の4
(イ) 財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例(以下「財産の交換等に関する条例」という。)
イ 事実の概要
市長は、本件平田台の土地を含む春日運動広場(以下「春日運動広場」という。)について、土地区画整理事業の保留地の中で学校用地として取得したものの、学校用地として活用することはなく、スポーツを中心とした暫定的な利用を行ってきた。これに関する担当所管課は健康推進部健康スポーツ課であり、当該土地及び現在は大部分が借地である春日市西野球場(春日市白水ヶ丘2丁目104番地。以下「西野球場」という。)の利用の方向性について、春日市総合スポーツセンターが整備された後に見出すこととしていた。西野球場については令和元年度(平成31年度)当初予算に測量業務委託料を計上し、借地の解消を進めることとしたが、春日運動広場については都市計画上「第一種低層住居専用地域」にあり、本格的なスポーツ施設の整備にはなじまないものとの認識から、その利用の方向性については、様々な可能性を探りながら、市長、副市長、経営企画部長等を含め庁内で協議を重ねてきたものである。
平成29年6月7日(売買、同日登記)、西鉄が西野球場の隣接地である本件白水ヶ丘の土地である日之出水道跡地(以下「日之出水道跡地」という。)を取得していることは公簿により確認されているが、平成30年4月に、健康推進部長等は西鉄が戸建住宅開発を進めている旨の情報を得たため、同年7月13日、健康推進部長等から西鉄の開発コンサルタント事業者の土木設計部長等に対し、開発内容及び進捗状況を確認した。健康推進部長等は、平成30年8月2日に市長及び副市長へ進捗状況を説明し、同年8月10日、開発後の戸建入居者からの西野球場利用による騒音、照明等に対する苦情等が想定され、施設利用に支障を来すおそれがあることから、西鉄に対し緩衝地帯の設定等を要望した。しかし、採算性等から西鉄からは難色が示されたものである。平成30年10月16日、市長等が出席する第9次実施計画の西野球場等用地購入事業の二次査定に併せて、日之出水道跡地と春日運動広場(上段部分)との交換について協議し、その結果、西鉄に打診することについて了解を得た。
これを受け、平成30年10月25日に健康推進部長等は西鉄本社を訪問し、土地の交換の可能性について正式に打診し、同年11月14日に西鉄が土地交換の協議に応じる旨の回答を得て交渉が開始された。
春日運動広場及び日之出水道跡地について、平成31年4月8日付け31春健ス第20号及び第21号により不動産鑑定評価を不動産鑑定士に依頼し、令和元年5月13日に鑑定評価書による報告を受け、同年5月24日に春日市不動産価格評定委員会を開催した。その結果、平成31年4月判定時点の日之出水道跡地の14,416.40㎡については66,900円/㎡を上限とし、春日運動広場の13,430.00㎡については71,800円/㎡を下限として用地交換を行う旨の評定を決定した。なお、不動産鑑定評価における調査範囲等の条件において、土壌汚染については法令上の確認、地下埋設物については目視による確認に留め、価格形成要因から除外して鑑定評価を行うものとされており、土壌汚染・地下埋設部の存在が確認された場合には当該鑑定評価額は変化する可能性を有しているとされている。
令和元年7月2日から春日運動広場と日之出水道跡地の「土地の交換に関する覚書」に係る西鉄との協議を開始し、同年7月9日に西鉄において土地交換の方針が固まった旨の連絡を受けた。これにより、春日市議会に対し、令和元年7月19日に市民厚生委員会及び地域建設委員会、同年7月29日に総務文教委員会、同年8月21日に再度市民厚生委員会において、健康推進部長等から土地の交換方針に関する事業説明を行った。
令和元年8月1日、市と西鉄との間で「土地の交換に関する覚書」を締結した。その内容は、平成31年4月1日時点の土地の価格に基づく等価交換とするもので、現在行政財産である春日運動広場については、交換のために分筆が必要となる市の土地の測量・分筆に係る予算措置及び普通財産への移管手続をすることができた場合において、土地の交換に関する契約を締結する旨のものである。
令和元年9月3日、令和元年第3回春日市議会定例会の議案考案の場において土地交換の内容を説明し、同年9月6日総務文教委員会における春日運動広場の測量・分筆に係る補正予算及び西野球場と日之出水道跡地を一体としたスポーツ施設計画策定に係る補正予算の審議を経て、同年9月26日の本会議において関連の補正予算が原案どおり可決された。
日之出水道跡地の埋蔵文化財の事前調査については、平成26年6月10日付けで日之出水道機器株式会社(以下「日之出水道」という。)から春日市教育委員会社会教育部文化財課(当時)に対し調査依頼があり、同年7月22日から8月22日までの期間で試掘を実施し、同年9月5日付け26春文文第222号により回答している。この回答には、当該地は周知の埋蔵文化財包蔵地(原(はる)遺跡)に含まれ、今回の事前調査では対象地に遺跡が確認されたこと、今後の当該地における開発計画に関しては埋蔵文化財に影響を与えるような掘削等の工事を行う場合、本調査が必要となる旨の調査結果が報告されている。平成31年1月28日、文化財課は、日之出水道跡地の東側(埋蔵文化財がない部分)にまとまって廃棄物(生活ごみ、コンクリート塊等)が埋設されていることを健康推進部長等へ伝えた。平成31年3月6日、西鉄が戸建住宅開発を前に文化財課立会いのもと日之出水道跡地の自主調査を実施し、この調査内容について文化財課が、平成26年の試掘の際に作成された図面上に、産廃の埋設が密な範囲(2019.3.6確認)として記載した。
これとは別に、平成28年11月に日之出水道が自社所有時点で分析機関を用いて自主調査した結果を、土地購入の際に西鉄が入手しているが、その結果では、土壌汚染リスク調査の対象となったすべての地点の特定有害物質について基準値超過は確認されなかったものであり、そのことを受けて西鉄が住宅地としてこの土地を取得したことについては、令和元年10月に西鉄から説明がなされていると健康推進部長から聞き取った。
市長は、令和2年3月27日に本件平田台の土地について、行政財産から普通財産への移管手続を行い、同年3月31日に西鉄との間で、本件平田台の土地と本件白水ヶ丘の土地を交換する契約を締結した。
ウ 監査対象事項の審査
(ア) 市長と西鉄との間で行った本件平田台の土地と本件白水ヶ丘の土地の交換契約が法第237条及び第238条の4並びに財産の交換等に関する条例に違反する旨の主張について
法第237条は、財産の範囲及び区分と管理及び処分に関する基本規定であり、法第238条の4は、行政財産の交換、売り払い、譲与、出資若しくは信託等の処分又は貸付け若しくは私権の設定の運用を原則として禁止するとともに、その用途又は目的を妨げない限度において、貸付け若しくは地上権若しくは地役権を設定し、又は使用の許可をすることができることを定め、それらの取扱いに関し定めた規定である。また、財産の交換等に関する条例は、普通財産の交換、譲与、無償貸付等に関し定めた条例である。
地方自治体の財産の管理権限は、法第149条第6号の規定により長の権限であり、さらに議会の議決事項を定めた法第96条第1項第6号に「条例で定める場合を除くほか」と掲げられているのは、条例で一般的取扱基準を定めた場合には、個々の行為について議決を要しないとの趣旨である。
本件平田台の土地は、令和2年3月31日の交換契約時においては、公有財産のうち普通財産に区分されており、法第96条第1項第6号の規定に基づき定められた条例である財産の交換等に関する条例第2条第1項第1号の規定に基づき、市において公用又は公共用に供するため他人の所有する財産を必要とするときは、議会の議決を経ることなく、土地の交換が可能である。なお、本件平田台の土地については、令和2年3月27日に、行政財産から普通財産への移管手続がなされている。行政目的を失った行政財産を普通財産とするのは、法令で特別な定めがない限り、法第149条第6号に規定されるとおり地方公共団体の長の権限であり、財産管理規則等に基づいて行うこととなる。本件の場合、春日運動広場は学校用地として活用することはなくなり、スポーツを中心とした暫定的な利用を行ってきたが、春日運動広場が都市計画上「第一種低層住居専用地域」にあり、本格的なスポーツ施設の整備にはなじまないものとの認識があったものである。このため、市長を含めた庁内での協議を重ねた結果、市長の裁量によって行政財産から普通財産へ変更することを前提とした土地交換の手続に着手し、行政財産から普通財産へ移管したものである。
その際、本件平田台の土地の普通財産への移管に関し請求人ら代理人弁護士が述べているとおり、公共用地としての用途廃止が理由ではなく、本件土地交換契約を締結することそのものが理由とされていることについては、その移管理由に関する起案文書においては説明が不足する感はぬぐえない。
しかしながら、行政財産から普通財産への移管理由に関し説明不足はあるものの、春日運動広場の学校用地としての活用目的が失われていたこと、土地交換の方針を決定した経緯や、議会への説明といった事情を総合的に判断されたものであるため、請求人らの西鉄との交換契約のみをもって移管の目的であるとされている旨の主張については、合理的な根拠が認められない。
また、請求人の交換の差額が高価なものの価格の6分の1を超えているとの主張については、1㎡当たりの固定資産評価額等を用いてのものであるが、本件の土地交換は等価交換であり、交換する総価額に差がないものであるから、その主張は認められない。
本件の土地交換に当たっては、その土地交換契約書第2条の規定により、等価交換とされており、市は、春日市不動産価格評定委員会における土地の価格の評定結果を踏まえ、西鉄が所有する本件白水ヶ丘の土地と市が所有する本件平田台の土地を等価として、法第237条第2項及び財産の交換等に関する条例第2条第1項第1号の規定に基づき土地の交換を行ったものであり、法及び条例の定めに従って手続がなされており、違法性は認められない。
(イ) 担当部長の本件交換手続に関する説明に疑問点がある旨の主張について
監査請求人の主張は、出張命令簿の出張日の「年度」と「年」の誤認に基づくものであり、担当部長の甲第5号証の陳述内容に、事実と相違する点は認められない。
(ウ) 市長や担当部長が本件土地交換に関し議会に報告・説明せず、逆に隠蔽していたことが不当である旨の主張について
令和元年9月議会に、本件平田台の土地を含む春日運動広場の測量・分筆に係る予算と本件白水ヶ丘の土地を一体としたスポーツ施設計画策定に係る予算を計上し、議会において審議・討論がなされ、承認がなされている。その際、本件土地交換は議会の議決が必要な事案ではないが、当該測量・分筆に係る理由として、本件土地交換についての説明がなされている。
また、本件土地交換は、交渉の相手方がある事案であり、議会に、どのような時期に、どのように説明するかは、市長の裁量権の範囲の問題と考えられるが、令和元年7月における議会の各常任委員会での土地交換の方針説明、同年12月議会における本件土地交換に係る一般質問に対する答弁など機会をとらえて内容に応じ、議会にも重ねて説明を行っていることから、不当とまでは言えないと考える。
なお、監査請求人の「極めて不当かつ悪質」との主張の根拠になっている認識は、(イ)記載のとおり、監査請求人の事実誤認によるものと認められる。
(エ) 本件土地交換契約が違法なものであり、市は市長に対する損害賠償請求権を有する旨の主張について
a 土地の鑑定評価等に基づく損害賠償請求について
本件の土地交換に係る鑑定評価の適正性について、本件の土地交換に係る鑑定評価を行った不動産鑑定士から、主に次のような説明がなされているが、その説明には合理性が認められる。
(a) それらの土地は、双方とも大規模な土地であるため、造成費や潰れ地(土地を開発したときに、道路、公園、調整池などの公共公益的施設の用地として使われ、宅地としての活用ができない土地)の関係などにより、標準的画地規模の宅地の価格よりも、双方とも鑑定評価額が下がっている。
(b) 開発による区画割を前提とした大規模な土地の場合は、土地の形状はさほど問題にならない。
(c) 接道の面においては、本件白水ヶ丘の土地は道路に面する部分が多く、利用しやすい一方で、本件平田台の土地は、道路との高低差が大きく大規模な造成が必要となるほか、北側の一部しか道路への出入りができないため、区画分譲の設計上、一定程度の制約を受ける。
固定資産税評価額については、3年ごとに評価が変わるものであり、国が定める固定資産評価基準に基づく評価となっており、不動産鑑定評価額とは算定目的、算定方法が異なるものである。特に、本件のような大規模造成等を伴う場合の鑑定評価額と単純に比較することは困難であり、その算定目的、算定方法が異なることによる影響が大きく、双方の算定結果が異なることは起こりうるものである。
一般に公的な土地取引における土地の評価においては、不動産鑑定評価額は、客観的な価格として認められるものであり、国において国有財産を交換する場合についても、不動産鑑定評価を実施している。
また、地価公示価格については、あくまでも近隣の標準地の価格になるものである。
なお、鑑定事業者の選定については、形式的には本件の土地交換の担当部署である健康推進部が起案を行っているが、実質的には市が通常用地取得を行う際の担当部署である都市整備部が主体となって行い、また、鑑定事業者との協議についても、都市整備部が主体となって行い、健康推進部は、鑑定評価が出るまで鑑定業者と接触をしておらず、鑑定概要については、正式な鑑定書の印刷・製本を行う前に、その概要が事前に知らされたもので、例外的な取扱いとは言えず、鑑定の恣意性は認められない。
これらの事項を検討した結果、土地の鑑定評価等に基づく損害賠償請求には理由がないと考える。
b 埋蔵文化財発掘本調査費用の損害賠償請求について
本件平田台の土地及び本件白水ヶ丘の土地の不動産鑑定評価については、市における通常の土地購入又は売却の場合と同様に不動産鑑定士に依頼したものであり、土地に係る諸条件は、不動産鑑定士による調査に委ねられ、不動産鑑定士は国が定める「不動産鑑定評価基準」に従い鑑定評価し、対象不動産の最有効使用を「一般住宅の敷地」と判定され、戸建住宅程度の建築であれば、埋蔵文化財は鑑定評価の価格に影響を与えるまでのものではないと判断し、鑑定評価されたものである。
監査請求人が指摘する埋蔵文化財発掘本調査費用1,906万円は、西鉄の開発計画に基づいて、本件白水ヶ丘の土地に道路及び調整池を整備するに当たって必要となる本調査費用の額である。市が本件白水ヶ丘の土地を取得した後、どのような利用をするかによって、埋蔵文化財発掘本調査費用の必要性とその範囲は大きく変動するものであり、市が本件白水ヶ丘の土地の全面を多目的広場として利用するのであれば、本調査の必要はないことが想定されたものであるため、埋蔵文化財発掘本調査費用の損害賠償請求には理由がないと考える。
c 廃棄物の調査・撤去費用相当額の損害賠償請求について
市及び西鉄の両者は、日之出水道跡地の生活ごみ、施設解体に伴うコンクリート塊等の廃棄物の存在については、平成31年3月の西鉄による自主調査により確認されているものの、これら廃棄物すべてについては西鉄側の負担により除却し、その上で引き渡しを受けることを確認したため、当該鑑定評価に反映させないものとした。その後、埋設廃棄物の除却範囲については、文化財試掘調査の段階で埋設廃棄物の存在を確認した市教育委員会文化財課職員を含む市の職員の立会いの下に確定し、西鉄が埋設廃棄物を除却し、この除却範囲を除く本件白水ヶ丘の土地については、文化財課が敷地全域を試掘した限り、市内の他の一般的な土地と同様の状態であることが認められている。
また、西鉄からは、本件白水ヶ丘の土地の土壌汚染リスク調査の結果、住宅地として問題はないということで取得した旨の説明を受けたため、多目的広場等に利用する上で特段の問題はないとの認識に至ったものである。
これらのことを踏まえて、土地交換契約書第10条第2項において、「土壌汚染、埋設物等」を明記した瑕疵担保責任についての規定がなされており、隠れた瑕疵があれば、これにより対応することとされたものである。
これらの事項を検討した結果、廃棄物の調査・撤去費用相当額の損害賠償請求には理由がないと考える。
6 監査委員の判断
監査対象事項の審査の内容を踏まえ、監査委員としての判断を合議した結果、本件請求には理由がないと認め、法第242条第5項の規定により主文のとおり決定する。
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このページに関するお問い合わせ
監査委員事務局 監査担当
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