住民監査請求の監査結果について(平成31年4月15日付け31春監監第9号)

ページID:1002956  更新日 令和5年5月24日

31春監監第9号

平成31年4月15日

監査請求人 様

監査請求人 様

春日市監査委員 光安 直樹

同 前田 俊雄

住民監査請求の監査結果について(通知)

平成31年2月14日付けで受理した住民監査請求の監査結果を、地方自治法第242条第4項の規定により別紙のとおり通知します。

第1 監査請求人

住所 春日市●●●●

氏名 ●●●●

住所 春日市●●●●

氏名 ●●●●

第2 監査請求の要件審査

本件監査請求(以下「本件請求」という)は、平成31年2月14日付けで提起され、同日受付し、審査の結果、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という)第242条第1項および第2項に定める要件を具備しているものと認められたので、平成31年2月21日に受理を決定した。

第3 監査請求の内容

1 請求の要旨(「住民監査請求書」原文のまま記載)

補助金の定義は、憲法第89条において支出対象、支出範囲が規定され、また、地方自治法第232条の2において支出の根拠が規定されている。さらには、これらの法令に抵触しない範囲で、個々の補助金の支出根拠については、条例、規則または要綱などにより明確に指定する必要がある。

本市における補助金はその運用の透明性、支出の明確性による公平性・公益性の確保が求められ、市民の説明責任が最も重要であるが、補助金交付が長期化し、既得権化の傾向がみられるものがある。

補助金等の在り方については、平成29年度春日市歳入歳出決算及び基金運用状況等審査意見書においても、監査委員より「各種補助金や負担金などの交付の決定や支出に当たっては、対象事業の目的や効果などの検証に努め、その適正化を図られたい」との意見が添えられている。また、毎年度の予算編成方針には、19節負担金補助金及び交付金についての取り組みが具体的に示されているにも拘らず形骸化していると思われることから、次の補助金について支出の是非を問うものである。

平成29年度春日市一般会計決算における春日市商工会への補助金は、商品券事業、創業支援事業計画補助などを含めて総額24,237,124円となっている。そのうち、20,088,000円が春日市商工会一般事業費補助金交付要綱に基づく補助金で、本市の他事業の補助金が削減される傾向の中、この事業の補助金が4年間で実に842,400円の増加となっている。

増加の理由は、春日市商工会一般事業費補助金交付要綱の第2条に補助金の交付対象として「市長は、商工会が中小企業者の経営の改善及び発展のために行う事業のうち、必要かつ適当と認めるものに要する経費について、予算の範囲内で補助金を交付することができる」と規定しているにも拘らず、算出基準を補助事業に要する経費ではなく、会員数(賛助会員を含む)を対象とし、賛助会員の増加が大きな要因である。

春日市商工会会員資格については、春日市商工会定款第9条に「春日市内で事業所等を有する事業者」と規定されている。また、賛助会員については同第18条に「会員の資格を有しない者であっても、本商工会の趣旨に賛同する者は、本商工会の賛助会員となることができる」と規定され、賛助会員は会員の資格を有しない市外事業者であることは明白である。

そもそも、春日市商工会一般事業費補助金は、毎年度の予算編成方針に基づき補助事業の精査を行い、その公益性などから算出されるべきものであり、資格を有しない市外事業者の賛助会員を含めた会員数を算出根拠とすることは、予算編成方針のみならず春日市商工会一般事業費補助金交付要綱に違反するものと考え、春日市民の税金を支出すべきでないと考える。

よって、春日市商工会一般事業費補助金交付について、下記の措置を取られるよう請求を行うものである。

2 措置要求(原文のまま記載)

(1)市長は、これまで交付してきた春日市商工会一般事業費補助金が、春日市商工会一般事業費交付要綱第2条に規定している「市長は、商工会が中小企業者の経営の改善及び発展のために行う事業のうち、必要かつ適当と認めるものに要する経費」に合致しているか判断するよう求める。

(2)市長は、春日市商工会への事業費補助金交付算定基準が要綱で定める補助事業でなく、会員数(賛助会員含む)により補助金を算定している現状を確認し、要綱で定める目的に沿った補助金ではないことを認定するよう求める。

(3)市長は、春日市が支払った平成30年度における春日市商工会への補助事業の補助金のうち、資格を有しない賛助会員に対する補助金が不当な支出であることを認め、過去4カ年遡及して他の補助金も含めて返還請求するよう求める。

(4)市長は、春日市商工会が春日市商工会一般事業費補助金交付要綱第3条に定める補助金の交付申請において、下記の書類等が要綱に基づく補助事業の内容に沿ったものとなっているか精査するよう求める。

ア 春日市商工会組織等一覧表

イ 春日市商工会基本方針(案)

ウ 春日市商工会事業経費の配分内訳表

エ 事業計画の内容及び経費明細書

オ 春日市商工会一般事業費実施計画書

カ 収支予算書

キ 収支状況調書

ク その他市長が必要と認める書類

(5)市の補助金算出については、予算編成方針に基づき、市民への説明責任や補助金事業の公益性から厳格に行なわれるべきである。予算編成方針の中で、19節負担金補助金交付金についてその取り組みが具体的に記載されているが、なかでも三点目の担当所管は、「補助金等が特定の団体の既得権益化している」との市民からの誤解を招くことがないよう、各年度において補助金等を交付する必要性(目的)を確認する意味で、交付団体の事業内容や決算状況を十分に把握し、特に「決算余剰金(繰越金)が補助金等の額に対して過大ではないか」「補助金等の額に対して、過大又は使途不明な積立金がないか」などの点については、十分確認、精査し、対外的に説明できる状態を要求すべきである。そのことを踏まえ、市長は、春日市商工会事業の中でもレクレーション事業(会員及び社員・家族対象であるにも拘らず、会員のお客様を同行させている事例がある)が要綱に基づく補助事業に適していないことを認めるとともにその他の商工会補助事業も要綱第10条に定める実施状況報告に基づき、補助金の使途が正当に実施されたか確認するよう求める。また、決算余剰金(平成29年度、8,297,421円)引当資産(同年度末、58,802,039円)が補助金等の額に対して過大であると考えられることから精査し、適切な措置をとるよう求める。

(6)市長は、春日市が春日市商工会一般事業費補助金交付要綱に基づく補助金の額を会員(賛助会員を含む)一人当たりに10,800円を乗じて交付しているが、どの事業にどう算定してその金額になったのかを明らかにするよう求める。

3 事実証明書

(1)春日市商工会一般事業費補助金交付要綱

(2)春日市一般会計平成29年度決算書の写し

(3)春日市商工会平成29年度収支決算書の写し

(4)春日市商工会員数に対する補助金の推移

第4 監査の実施

1 監査対象事項

監査請求の内容及び要件審査の結果を総合的に勘案し、監査対象事項を次のとおりとした。

(1)春日市商工会一般事業費補助金交付要綱(昭和57年3月告示第9号。以下「要綱」という)に基づく春日市商工会一般事業費補助金(以下「補助金」という)の額を商工会の会員数(以下「会員数」という)によって算定することは要綱の目的に一致していないか、また会員数に賛助会員の数を含めたことは不当か。

(2)春日市商工会(以下「商工会」という)において、「レクレーション事業に会員のお客様を同行させている」実態やその決算余剰金及び引当資産が補助金の額に対して過大である事実はあるか。また当該事実がある場合、補助金の交付はどうあるべきか。

(3)補助金の額を会員一人当たり10,800円を乗じて得た額としている根拠は何か。

2 監査対象所管

地域生活部地域づくり課

3 請求人による陳述

法第242条第6項の規定に基づき、平成31年3月8日、監査請求人に証拠の提出及び陳述の機会を設けたが、監査請求人の申出により陳述は行われなかった。また、新たな証拠の提出もなかった。

4 監査対象部署に対する監査

監査に当たり、地域生活部地域づくり課に監査対象事項に関する関係書類、監査請求人の主張に対する弁明書及び関係資料の提出を求め、その提出を受けて審査を行うとともに、関係職員の陳述を求めた。

第5 監査の結果

1 事実の概要

春日市長(以下「市長」という。)は、補助金について平成30年度一般会計予算において21,320,000円を計上し、平成30年3月23日に平成30年第1回春日市議会定例会において議決を受けた。

平成30年6月7日に、商工会は、要綱第3条第2項の規定に基づき、市長に対し、春日市商工会一般事業費補助金交付申請書(以下「申請書」という)を提出した。

市長は、当該申請に係る書類を審査し、平成30年6月18日に補助金を交付することを決定し、春日市商工会一般事業費補助金交付決定通知書(同日付30春地商第248号)により商工会に通知した。その内容は、補助金の交付決定の対象となる事業を申請書記載の事業から「特別会計繰出金(地域振興事業費)」を除いた事業としている。また、補助金の額は、基本額20,239,200円と創業支援事業計画補助金に係わる加算額1,080,000円の合計額21,379,200円とし、事業ごとに補助金の額を定めている。なお、当該基本額は、商工会の平成29年度期首会員数1,874会員×年額会費12,000円×0.9(平成16年度からの10%減額措置に係る係数)で算定されている。

補助金の交付については、要綱第8条に基づき、半期ごとに分割して交付することとされ、平成30年度については、上半期10,659,600円、下半期10,659,600円となっている。上半期については、平成30年6月27日に商工会から要綱第9条第1項に規定する書類を添付して春日市商工会一般事業費補助金交付請求書(以下「交付請求書」という)が提出され、同年7月10日に補助金が交付された。下半期については、同年10月1日に商工会から要綱第10条に規定する上半期の春日市商工会一般事業実施状況報告書が提出され、当該報告書の審査を受けた後、同年10月23日に交付請求書が提出され、同年11月12日に補助金が交付された。

2 監査対象事項の審査

(1)要綱に基づく補助金の額を会員数によって算定することは要綱の目的に一致していないか、また会員数に賛助会員の数を含めたことは不当か。

監査請求人は、補助金の額を会員数によって算定することが、「市長は、商工会が中小企業者の経営の改善及び発展のために行う事業のうち、必要かつ適当と認めるものに要する経費について、予算の範囲内で補助金を交付することができる」とした要綱第2条の規定に合致していないと主張している。しかし、そもそも上記規定中の「中小企業者の経営の改善及び発展のために行う事業」は、その内容の拡充を通して、要綱が目的として規定した「中小企業の振興及び安定に寄与」できるとの解釈、前提に立てば、その担い手である商工会の会員数の増加は図られることが望ましい。そこで補助金の額について、正会員の数に加えて賛助会員の数をその算定の基礎に組み入れた意図は、会員数の増加による会費収入の増加や人的資源などの運営基盤の増強に着目したものとみることができる。また、そのことが必然的に反対給付たる地域振興のための様々な事業支出の増大を惹起するものとみるべきであり、かかる点において、会員数を補助金の額の算定基礎とした点については、会員の加入を促し、他方、事業支出を補てんする意味でも一定の合理性があると認められる。さらに、賛助会員を補助金の額の算定対象に組み込むことについても、多様な人脈の構築による取引の拡大や事業パートナーとの事業展開の可能性をより高めることを通じ、企業の振興と安定を支援しようとするものであり、要綱の趣旨に合致しないとはいえない。

(2)商工会において、「レクレーション事業に会員のお客様を同行させている」実態やその決算余剰金及び引当資産が補助金の額に対して過大である事実はあるか。

また当該事実がある場合、補助金の交付はどうあるべきか。監査請求人の主張する「客を同行させている実態がある」ことが仮に事実であったとしても、直ちに補助金の交付決定の取消し等の措置を執ることには疑義がある。むしろこの場合、商工会に対して、このような監査請求人の指摘をどう受け止め、求められる対策をどう講じていくかという問題について自律的解決を促し、その上で補助金の交付の是非を判断すべきであると思料する。そして、監査請求人の「客を同行させている実態がある」との指摘について、監査委員が所管課を通じて商工会に見解を求めたところ、もしそのような実態が客観的にも認容の限度を超えたものであることが確認できた場合は、

ア 指摘の実態を原因とする経済的被害などへの補てんは、商工会自身の財源である会費収入によって経理上は解消するとしていること。

イ 併せて、指摘の実態を組織内部の問題として捉え、もしも商工会の経済的損失などが生じた場合は、商工会自身がその求償権の行使を含め、厳正に対応していく方針であること。

との回答を得た。したがって、監査請求人の指摘は、住民監査請求の対象となった補助金の交付を阻害する直接的な原因とはなりえないことから、補助事業の審査が結果として、不適切であったとはいえず、市の財務会計上の損失も認められない。また、決算余剰金や引当金が過大であるとの主張についても、これらは資金不足や資産購入などに備え、応分の金額が計上されたものであって、商工会の監事による監査報告や福岡中小企業振興事務所の監査報告において、改善や検討を指摘された重要な事実がないことをみても、現状はそれぞれが不適切であるとはいえない。

(3)補助金の額を会員一人当たり10,800円を乗じて得た額としている根拠は何か。

会員数と基準単価により算定した補助金の額について、市は、要綱に定める「中小企業の振興及び安定」が実現できる額であり、かつ商工会の自立を阻害せず、その事業資金確保のための自助努力を促す額となるよう、事業内容や市の財政状況など、様々な要素を総合的に勘案し、市民の理解が得られる範囲内で決定したとしている。このことについては、補助金の額の算定方法が明瞭かつ規律的であり、補助金の額の安定性を確保し、さらに事業振興を誘導するなどの政策要請にも適うなどの利点も認められ、そこに不当な点は認められない。また、補助金額の算定については、商工会の前年度期首の会員数に商工会の会員の年会費相当額である12,000円を乗じて得られた金額(以下「補助金総額」という)を交付金額としていたものを、平成16年度から市の財政的理由により補助金総額に対して10%減額をしたものである。この10%減額を年会費相当額についての計算に当てはめた結果が10,800円になるものである。

第6 監査委員の判断

監査対象事項の審査の内容を踏まえ、監査委員としての判断を合議した結果、本件請求については、第3の2(3)の「過去4カ年遡及して他の補助金も含めて返還請求を求める」の部分は、法第242条第2項の規定により、本件請求から1年以内に支給された補助金の返還請求を求める部分を除き、適法ではないものと認め、その他第3の2(1)~(6)のいずれについても請求理由がないものと認め、結論のとおり決定する。

第7 結論

本件請求について、適法ではないと認める部分は、これを却下し、理由がないものと認める部分は、これを棄却する。

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