住民監査請求の監査結果について(令和元年12月19日付け01春監監第127号)
ページID:1005021 更新日 令和5年5月24日
住民監査請求の監査結果について(概要)
令和元年10月23日付けで受理した住民監査請求の監査結果を、請求人(5人連名)宛てで、地方自治法第242条第4項の規定により別紙概要のとおり、令和元年12月19日付け01春監監第127号により通知しました。
春日市監査委員 光安 直樹
同 藤井 俊雄
第1 監査請求人
- 請求人A(代表者)
- 請求人B
- 請求人C
- 請求人D
- 請求人E
いずれの請求人も住所を春日市内に有するものである。
第2 監査請求の要件審査
本件監査請求(以下「本件請求」という)は、令和元年10月23日付けで提起され、同日受付し、審査の結果、地方自治法(昭和22年法律第67号、以下「法」という)第242条第1項及び第2項に定める要件を具備しているものと認められたので、令和元年11月5日に受理を決定した。
第3 監査請求の内容
1 請求の要旨
春日市所有の土地(福岡県春日市平田台5丁目1番の一部、以下「春日運動広場」という)と西日本鉄道株式会社(以下「西鉄」という)所有の土地(福岡県春日市白水ヶ丘6丁目122番他27筆、以下「日之出水道跡地」という)の等価交換について監査請求するものである。詳細については、リンクしているPDFファイルの「住民監査請求書」原文記載を参考するか問い合わせてください。
2 措置要求
- (1) 監査委員は、市長に対し、平田台野球場と西日本鉄道所有の土地等価交換については広く協議を行い、議会の議決に付すべき事案であるかどうかの判断をすることを求める。
- (2) 監査委員には、西日本鉄道株式会社の関係者を含め、当事者の意見聴取を行い等価交換に至った経緯を明らかにすることを求める。
- (3) 監査委員は、市長に対し、9月議会での分筆測量するための予算案の執行停止を勧告することを求める。
- (4) 監査委員は、分筆測量するための予算を執行した場合には、市長に対しその予算額を春日市に返還するよう求める。
3 事実証明書
- (1)令和元年9月24日付 公開質問状
- (2)令和元年10月11日付 公開質問状に対する回答書
- (3)情報公開制度により開示された、春日運動公園と西日本鉄道株式会社所有の土地(旧日の出水道跡地)等価交換に係る資料一切
第4 監査の実施
1 監査対象事項
監査請求の内容および要件審査の結果を総合的に勘案し、監査対象事項を次のとおりとした。なお、措置要求が財務会計上の行為ではないと判断される部分については、監査対象としないものとした。また措置要求にある「予算の執行停止」などの法第242条第3項に規定する暫定的停止勧告に関しては、本件請求を受理した段階では、当該財務会計上の行為が違法であると思料するに足る相当な理由は見当たらず、また回復困難な損害を避けるため緊急に措置する必要もないと判断し、停止勧告不相当とした。
- (1)市所有の春日運動広場と西鉄所有の日之出水道跡地の等価交換について、法第237条第2項に基づき議会の議決が必要であるか。さらにこの議決を得ていないにもかかわらず等価交換を前提とした「分筆測量をするための予算」を執行することは違法か。
- (2)等価交換により取得予定の日之出水道跡地に関し、その利用の実施計画などが策定されないまま、行政財産である春日運動広場との土地交換に関する覚書が締結されていることは不当であるか。
- (3)本件土地(春日運動広場および日之出水道跡地)に関する不動産鑑定については、土壌汚染の事実や埋蔵文化財の存在を無視して鑑定依頼した結果であり、固定資産評価額と比較した場合でも、その評価は恣意的で不当なものであるか。
2 監査対象所管
健康推進部 健康スポーツ課
3 請求人による陳述
法第242条第6項の規定に基づき、令和元年11月19日、監査請求人に証拠の提出および陳述の機会を設け、請求人5人から請求の要旨について補足説明および証拠の提出を受けた。詳細については、リンクしているPDFファイルの記載を参考にされたい。
4 監査対象部署に対する監査
監査に当たり、健康推進部健康スポーツ課に監査対象事項に関する関係書類、監査請求人の主張に対する弁明書および関係資料の提出を求め、その提出を受けて審査を行うとともに、健康推進部長および健康スポーツ課長の陳述を求めた。詳細については、リンクしているPDFファイルの記載を参考にされたい。
第5 監査の結果
1 事実の概要
詳細については、リンクしているPDFファイルの記載を参考にするか問い合わせてください。
- 春日市長(以下「市長」という)は、春日運動広場(福岡県春日市平田台5丁目1番地)について、土地区画整理事業の保留地の中で学校用地として取得したものである。
- 春日市西野球場(福岡県春日市白水ヶ丘6丁目104番地、以下「西野球場」という)は大部分が借地である。
- 西野球場については借地の解消を進めているが、春日運動広場については、本格的なスポーツ施設の整備にはなじまないものと認識し、庁内でその対応の協議を重ねてきた。
- 平成29年6月、西鉄が西野球場の隣接地である日之出水道跡地を取得した。
- 平成30年4月に、健康推進部長などは西鉄による戸建住宅開発の情報を得て、7月にはその開発内容および進捗状況を確認した。
- 健康推進部長などは西鉄に対し、開発後の戸建入居者からの苦情などの対策として、西野球場との緩衝地帯の設定などを要望したが難色が示された。これにより、10月に市長了解のもと、健康推進部長などは西鉄と、土地の交換の可能性について正式に打診し、11月交渉が開始された。
- 春日運動広場および日之出水道跡地について、平成31年4月不動産鑑定評価を不動産鑑定士に依頼し、この鑑定評価書による報告を受けた後、令和元年5月24日春日市不動産価格評定委員会を開催した。その結果、平成31年4月判定時点の日之出水道跡地の14,416.40平方メートルについては66,900円/平方メートルを上限とし、春日運動広場の13,430.00平方メートルについては71,800円/平方メートルを下限として用地交換を行う旨の評定を決定した。
- 不動産鑑定評価における調査範囲などの条件においては、土壌汚染については法令上の確認、地下埋設物については目視による確認に留め、価格形成要因から除外して鑑定評価を行うものとされており、土壌汚染・地下埋設部の存在が確認された場合には当該鑑定評価額は変化する可能性を有しているとされている。
- 令和元年7月2日から春日運動広場と日之出水道跡地の「土地の交換に関する覚書」に関する西鉄との協議を開始し、西鉄側の土地交換方針が固まったことから、春日市議会の関係各常任委員会において、健康推進部長などから土地の交換方針に関する事業説明を行った。
- 令和元年8月1日、春日市と西鉄との間で「土地の交換に関する覚書」を締結した。
- 令和元年9月の市議会定例会の議案考案などにおいて土地交換の内容を説明し、春日運動広場の測量・分筆に係る補正予算および西野球場と日之出水道跡地を一体としたスポーツ施設計画策定に係る補正予算の審議を経て、本会議において関連の補正予算が可決された。
- 日之出水道跡地の埋蔵文化財の事前調査については、平成26年6月に日之出水道機器株式会社(以下「日之出水道」という)から春日市教育委員会社会教育部文化財課(当時)に対し調査依頼があり、7月22日から8月22日の期間で試掘を実施した。
- 当該地は周知の埋蔵文化財包蔵地(原(はる)遺跡)に含まれ、今回の事前調査では対象地に遺跡が確認されたこと、今後の当該地における開発計画に関しては埋蔵文化財に影響を与えるような掘削などの工事を行う場合、本調査が必要となる旨の調査結果が報告されている。
- 平成31年1月、文化財課は、日之出水道跡地の東側に生活ごみやコンクリート塊等の廃棄物が埋設されていることを健康推進部長などへ伝えた。
- 平成31年3月、西鉄が戸建住宅開発を前に文化財課立会いのもと日之出水道跡地の自主調査を実施し、この調査内容について文化財課が、平成 26年の試掘の際に作成された図面上に、産廃の埋設が密な範囲として記載した。
- 平成28年11月に日之出水道が自社所有時点で分析機関を用いて自主調査した結果では、土壌汚染リスク調査の対象となったすべての地点の特定有害物質について基準値超過は確認されなかったものであり、そのことを受けて西鉄が住宅地としてこの土地を取得したと、令和元年10月に西鉄から健康推進部長などへ説明された旨を健康推進部長から聞き取った。
2 監査対象事項の審査
(1) 市所有の春日運動広場と西鉄所有の日之出水道跡地の等価交換について、法第237条第2項に基づき議会の議決が必要であるか。さらにこの議決を得ていないにもかかわらず等価交換を前提とした「分筆測量をするための予算」を執行することは違法か。
春日市所有の春日運動広場については、公有財産のうち行政財産に区分されており、これを交換し、出資の目的とし、もしくは支払手段として使用し、または適正な対価なくしてこれを譲渡し、もしくは貸し付ける場合は、法第237条第2項の規定に基づき、条例または議会の議決によらなければならない。
現行の行政財産のまま、春日運動広場と日之出水道跡地の交換することは、条例または議会の議決によらなければならないが、普通財産とした場合は、法第96条第1項第6号の規定に基づき定められた条例である財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例(昭和39年条例第13号、以下「財産の交換等に関する条例」という)第2条第1項第1号の規定に基づき、春日市において公用または公共用に供するため他人の所有する財産を必要とするときは、議会の議決を経ることなく、土地の交換が可能である。
行政目的を失った行政財産を普通財産とするのは、法令で特別な定めがない限り、法第149条第6号に規定されるとおり地方公共団体の長の権限であり、財産管理規則等に基づいて行うこととなる。本件の場合、春日運動広場は学校用地として活用することはなくなり、スポーツを中心とした暫定的な利用を行ってきたが、春日運動広場が都市計画上「第一種低層住居専用地域」にあり、本格的なスポーツ施設の整備にはなじまないものとの認識があったものである。このため市長を含めた庁内での協議を重ねた結果、市長の裁量によって行政財産から普通財産へ変更することを前提として土地交換の手続に着手したものである。またこの手続きのために必要な分筆測量業務委託料を令和元年度春日市一般会計補正予算(第4号)に計上したものであり、これは議会による審議を経て、本会議において関連の補正予算が原案どおり可決成立されたものである。
したがって、現行の行政財産のままで土地の交換をするものではなく、普通財産への変更手続きとしての分筆測量業務を実施し、財産の交換等に関する条例に基づき土地の交換をするものであれば、議会の議決を経る必要はない。また、上記条例に基づき、議会の議決を経ることなく土地の交換ができる以上、この交換に必要な議会が認めた分筆測量のための予算は、春日市財務規則(平成5年規則第8号)に定められた手続きに従って執行する限りにおいて違法性はない。
(2) 等価交換により取得予定の日之出水道跡地に関し、その利用の実施計画等が策定されないまま、行政財産である春日運動広場との土地交換に関する覚書が締結されていることは不当であるか。
本件における土地交換に関する覚書については、現在行政財産である春日運動広場を日之出水道跡地と交換するために分筆が必要となる市の土地の測量・分筆に係る予算措置および普通財産への移管手続きをすることができた場合において、土地の交換に関する契約を締結する旨を定めたものである。これは本件覚書が、土地の交換に関する本契約を締結しようとする場合の民法(明治29年法律第89号)第556条および第559条に規定する予約に相当する基本契約であり、本契約が将来成立させることを約する契約であると解される。
本契約については、普通財産への変更手続きを経て締結されるべきことは前述の(1)で述べたとおりである。一般に地方公共団体が締結する契約は、地方公共団体が私人と対等の地位において締結する契約であり、その効力その他の契約の実体については全て私法の規定を受けるもので、いわゆる契約自由の原則も適用されることから、本件覚書についても同様に締結されることについて違法性は認められない。
取得予定の日之出水道跡地に関し請求人が述べているとおり、その利用の実施計画などが策定されていないことや、土地を取得する場合には、その必要性が重要であることについては理解できるものである。しかし、土地取得に関して地方公共団体の長に裁量権が認められており、計画などの有無が本件覚書締結の前提となるかについての特段の法令などの規定が見当たらない。また本件は議会の議決が必要な事案ではないが、議会の各常任委員会での審議などを経ており、実質的な審議の機会を設けていると考えられる。
春日市の投資的事業を実施するにあたって、実施計画を策定し、予算に計上し、計画的に実施するということは、計画行政の基本であるとは思うが、本件が覚書相手方との交渉事項であり、計画策定の時間的余裕もないことにより、この機会をとらえて内容に応じ、議会にも重ねて説明を行っていることから、不当とまでは言えないと考える。
(3) 本件土地(春日運動広場および日之出水道跡地)に関する不動産鑑定については、土壌汚染の事実や埋蔵文化財の存在を無視して鑑定依頼した結果であり、固定資産評価額と比較した場合でも、その評価は恣意的で不当なものであるか。
春日運動広場および日之出水道跡地の不動産鑑定評価については、春日市における通常の土地購入または売却の場合と同様の手続きで不動産鑑定士に依頼したものであり、土地に係る諸条件は、不動産鑑定士による調査に委ねられ、不動産鑑定士は国が定める「不動産鑑定評価基準」に従い鑑定評価し、対象不動産の最有効使用を「規模180平方メートル前後に区画造成し、一般住宅の敷地として使用(分譲)すること」と判定されたものである。
不動産鑑定評価における調査範囲などの条件において、土壌汚染については、国が定める「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」において土壌汚染対策法の規定に基づく義務や指定がある土地であるかの確認を鑑定士に求めているが、これについては、土壌汚染対策法を所管する都道府県などのホームページで確認することができ、その結果が鑑定評価書に記載されている。また、同留意事項において、不動産鑑定士の通常の調査の範囲では対象不動産の価格への影響の程度を判断するための事実の確認が困難な特定の価格形成要因の例示として土壌汚染、埋蔵文化財および地下埋設物の有無およびその状態が挙げられていることから、不動産鑑定士は目視による確認に留めて鑑定評価したものである。このため、専門家による土壌汚染調査の結果でその存在が確認された場合には当該鑑定評価額は変化する可能性を有しているとしたものである。
春日市および西鉄の両者は、日之出水道跡地の生活ごみやコンクリート塊などの廃棄物の存在については、平成31年3月の西鉄による自主調査により確認されているものの、これら廃棄物全てについては西鉄側の負担により除却し、その上で引き渡しを受けることを確認したため、当該鑑定評価に反映させないものとした。また、土壌汚染についても、西鉄が土地を取得する前に日之出水道が実施した自主調査において、特定有害物質について基準値超過は確認されなかったため、当該鑑定評価に反映する必要はないと判断したため不動産鑑定士に対して説明していないものである。
また、日之出水道跡地の埋蔵文化財については、土壌汚染同様、その存在事実の確認が困難な特定の価格形成要因であることから、開発の際には届け出の必要性について鑑定評価書に特記したもので、存在したとしても戸建住宅程度の建築であれば埋蔵文化財には影響を与えないと判断して鑑定評価されたものである。
固定資産税評価額については、国が定める固定資産評価基準に基づく評価となっており、不動産鑑定評価額とは算定の目的、算定方法が異なるものである。特に本件のような大規模造成などを伴う場合の鑑定評価額と単純に比較することは困難である。
これらの事項を検討した結果、その鑑定評価額は恣意的で不当なものと思料する理由が見当たらないものと考える。
第6 監査委員の判断
監査対象事項の審査の内容を踏まえ、監査委員としての判断を合議した結果、本件請求については、第3の2の措置要求(1)の「広く協議を」行うことの部分、措置要求(2)および (4)については、法第242条第1項の規定に該当しないため、「議会の議決に付すべき事案であるかどうかの判断を求める」部分を除き、住民監査請求の要件を満たさず適法な請求と認められない。措置要求(3)については、法第242条第3項の規定に該当しないため適法な請求と認められない。措置要求(1) 「議会の議決に付すべき事案であるかどうかの判断を求める」との部分については請求に理由がないものと認められるので、結論のとおり決定する。
第7 結論
本件請求について、適法な請求と認められない部分は、これを却下し、理由がないものと認める部分は、これを棄却する。
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