随時監査の結果について(令和元年10月16日付け01春監監第99号)
ページID:1004446 更新日 令和元年11月15日
01春監監第99号
令和元年10月16日
春日市議会議長 松尾 徳晴 様
春日市長 井上 澄和 様
春日市監査委員 光安 直樹
同 藤井 俊雄
随時監査の結果について(報告)
地方自治法(昭和22年法律第67号)第199条第5項の規定に基づき、監査を実施したので、同条第9項の規定により、その結果を報告します。
記
1 監査の種類
地方自治法第199条第5項の規定による財務に係る随時監査
2 監査の目的
春日市が指名競争入札によりなされた業務委託契約の締結が、地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)および春日市財務規則(平成5年規則第8号)の法令などに則って適正になされているか。
3 監査の実施期間
令和元年6月12日から令和元年10月16日まで
4 監査対象
春日市財務規則第74条で準用される第72条の5の規定に抵触していると思われる、下記業務に係る指名競争入札および委託契約を対象とした。
(1)業務名称
(平成31・32年度分)市報等配布業務
(2)入札日
平成30年12月6日
(3)契約日
平成30年12月12日
(4)契約金額
単価契約につき落札額26,541,450円(消費税および地方消費税を含まない)
(5)契約期間
平成31年4月1日~平成33年3月31日
(6)受注者
株式会社産交ミック福岡支店
(7)事業承継者
株式会社進和プロモーション
(8)担当所管
経営企画部財政課契約検査担当および秘書広報課広報広聴担当
5 監査方法
本監査は、対象業務に係る、指名競争入札関係書類、契約書などの関係事績の提出を求め調査するとともに、入札および契約事務の担当所管である経営企画部財政課契約検査担当並びに、業務の検査監督および委託料支払事務の担当所管である同部秘書広報課広報広聴担当の関係職員の出席を求め、指名競争入札参加資格承継事務、指名競争入札および契約締結に至った事情などを聴取した。監査の結果については、法的な判断に関し弁護士の見解を参考とした。
6 監査の結果など
(1)事務処理などの流れ(経過など)
当該業務委託の契約締結、委託料の支払いなどまでに係る事務の流れは、次のとおりであった。
- ア 平成30年11月7日、秘書広報課広報広聴担当で当該業務に関する指名競争入札の依頼の起案を行い、同月12日付で決裁完了、同日付で会計管理者の合議を受け、同日財政課契約検査担当に、入札手続に係る事務処理のため事務が移された。
- イ 契約検査担当において、平成30年11月26日付けで、当該業務他3件に係る指名通知および入札会の開催に関する伺いが起案、同日決裁され、同日に指名された5者に対して施行(通知)されている。この通知については、株式会社産交ミック福岡支店が同月27日に受領している。
- ウ 平成30年12月3日、株式会社産交ミックは譲渡日平成31年3月1日をもって福岡支店におけるポスティングに関する事業を、株式会社進和プロモーションに譲渡することとして、事業譲渡契約を締結していた。これは、契約検査担当に提出された一般(指名)競争入札参加資格審査申請書変更届平成31年3月1日付け同日受付に添付された契約書の写しから確認できる。
- エ 入札は平成30年12月6日に実施されたが、指名をされた5者のうち3者は入札を辞退しており、2者による1回目の入札で26,541,450円(消費税および地方消費税を含まない)の最低金額を提示した株式会社産交ミック福岡支店が落札している。この入札における株式会社産交ミック福岡支店の委任状の提出はなく、入札書にも代理人の記載はないことから、株式会社産交ミック福岡支店長が入札に参加していると思われる。これについて、同支店長は入札時に事業譲渡の事実を知っていたかについて、令和元年8月7日に広報広聴担当が株式会社進和プロモーションから聞き取りを行ったところ、事業譲渡の件については知らなかったものと考えられるとのことである。
- オ 契約検査担当は、平成30年12月10日に契約締結伺の決裁を行い、同月12日付けで株式会社産交ミック福岡支店を契約相手として、契約締結している。この契約書をもとに、広報広聴担当は、平成31年4月1日付で財務会計システム上支出負担行為をおこない、同日決裁が完了しているが、支出負担行為書の債権者は株式会社進和プロモーションとなっている。システムから打ち出された同支出負担行為書の備考欄には、「平成31年3月1日付で受託者において業務承継が行われたため、契約締結時と社名が異なっている(株式会社産交ミック福岡支店→株式会社進和プロモーション)。」と加筆されている。
- カ 株式会社産交ミック福岡支店の支店長と株式会社進和プロモーション社長が平成31年1月24日に来庁し、広報広聴担当は、事業譲渡と今後の事業継続に対する説明を受けた。広報広聴担当から報告を受けた契約検査担当は、現在契約中の平成29・30年度分の市報等配布業務を引き続き履行させることが必要と、広報広聴担当などとの協議を経て、株式会社進和プロモーションへ承継すべく、同社へ一般(指名)競争入札参加資格審査申請書変更届の提出を指導した。
- キ 契約検査担当は、平成31年2月25日、進和プロモーションの一般(指名)競争入札参加資格承継申請に伴う認定のため、春日警察署長に対して、春日市が暴力団排除措置を講ずるための連携に関する協定書に基づく照会文書を提出し、春日警察署長から該当がない旨の同年3月5日付けの回答を得ている。
- ク 契約検査担当は、平成31年3月1日、株式会社進和プロモーションから提出された一般(指名)競争入札参加資格審査申請書変更届(様式1)を受け付けたが、同届には同社の春日市一般(指名)競争入札参加資格承継申請書(様式3-2)、履歴事項全部証明書、役員名簿、事業譲渡契約書(写し)などを添付している。様式1の提出は、株式会社産交ミック福岡支店の資格変更であるが、法人の吸収合併時は法人格が存続する側の法人に提出させており、同様の運用を行っている。株式会社進和プロモーションの入札参加資格については、財務会計システム上の業者登録を、株式会社産交ミック福岡支店から株式会社進和プロモーションへ同一の債権者番号を用いて(システム上は同一業者との取り扱いとなる)変更している。また契約検査担当は、事業譲渡契約書の写しを入手したが、その時点で事業譲渡の詳細な内容などを確認していない。なお、法人として株式会社産交ミックが存続しているかなどについても、登記などの確認はしていなかった。本監査委員から、株式会社産交ミックと株式会社進和プロモーションの資本提携関係などを確認されるよう求められたため、広報広聴担当が聞き取りを行ったところ、資本提携関係はなく事業協力関係に留まるとのことの説明を令和元年8月7日に受けた。
- ケ 本監査委員は、当該業務委託の前年度分である平成29・30年度分の市報等配布業務について、地方自治法第235条の2第1項の規定に基づく出納検査の実施に当たり、上記クのシステム上の業者登録変更が判明したため、平成31年4月25日事情聴取を行った。広報広聴担当および契約検査担当から、平成31年3月31日で契約期間満了となるが、平成31年3月1日付けで事業譲渡され、残り1カ月の業務を継続する必要があることから、株式会社進和プロモーションに平成29・30年度分の市報等配布業務を承継させたとの説明を受けた。
- コ 本監査委員からは、異例の承継に関する春日市の意思決定の証拠書類としての起案文書がなかったことに対し、令和元年5月7日付け(01春監監第23号)監査事務局長名で補正を求める文書を発し、契約検査担当により、これに応じた起案文書が平成31年3月1日付けで作成された。しかし同起案には、本監査委員から起案作成を求めてはいなかった平成31・32年度分の契約に関しても承継することを付記された。
- サ 平成29・30年度分の市報等配布業務を受注していた株式会社産交ミック福岡支店は、株式会社進和プロモーションへポスティング事業を平成31年3月1日付けで事業譲渡した。この業務について株式会社進和プロモーションが承継したため、広報広聴担当は同社に対して3月実施分(3月15日号・4月1日号)委託料1,154,123円の支出を平成31年4月26日に行った。
- シ 当該業務委託について、春日市は事業承継者の株式会社進和プロモーションと契約書を取り交わしてはいないが、広報広聴担当は同社に対して4月実施分(4月15日号・5月1日号)委託料1,118,357円の支出を令和元年6月10日に行った。引き続き5月実施分(5月15日号・6月1日号)委託料1,154,170円の支出を令和元年6月28日に行った。
(2)監査結果
平成30年12月6日に実施された入札会の以前に、株式会社進和プロモーションへ株式会社産交ミック福岡支店の事業の譲渡契約が締結されており、実質的には株式会社産交ミック福岡支店は、一般(指名)競争入札参加資格を有しなくなっていたと考えられる。両社間の事業譲渡は平成31年3月1日以降に効力が生じるため、入札時に株式会社産交ミック福岡支店は有資格者として存在していたと主張しても、それは形式的にすぎず、実際に株式会社産交ミック福岡支店は、4月1日以降に当該市報等配布業務の契約を履行することができないことから、入札条件に反していたと判断せざるをえない。また譲渡先の株式会社進和プロモーションは競争入札参加資格を有していなかったが、春日市は3月1日付け起案文書で、事業譲渡の結果により市報等配布業務委託契約を履行する者と認めた。落札者ではなく資格も有していなかった者を契約の相手方として変更し、契約を履行させるということは、地方公共団体が資力、信用その他について適切と認める者を事前に指名し、入札の方法によって競争させ、契約の相手方となる者を決定し、その者と契約を締結するという指名競争入札の趣旨に反していると思われる。以上のことから、株式会社産交ミック福岡支店が参加して行われた本件入札は、春日市財務規則第74条で準用される第72条の5第1項第2号の規定に抵触している。
指摘事項
以上の経過などから、次のとおり指摘する。
- 当該業務に対する事業譲渡を、入札執行者である契約検査担当が知るすべもなく有効に執行された入札会であったとはいえ、事業譲渡により契約の履行ができない株式会社産交ミック福岡支店は、事実上の入札参加資格を失っていたものであり、入札条件に反していたと思われる。形式的には3月1日まで事業譲渡の効力が生じていないとしても、契約の履行はできない株式会社産交ミック福岡支店が、入札参加資格を持たない株式会社進和プロモーションのために、それを意図しなくとも、結果があたかもこれを代理したかのように、入札に参加することは認められないものではないか。入札にこのような代理関係を認めてしまうと、入札の資格制限制度や指名競争入札の指名制度の存在意義がなくなることとなるから、当然に入札に参加することは認められないと考えるからである。
株式会社産交ミック福岡支店に対する指名業者たる地位は、支店単位ではなく法人としての資格審査の上で与えられ、その指名にあたって一定の条件に合致したものが選定されるということから、事業譲渡契約のみを根拠として、株式会社進和プロモーションに当然のようには承継できないものと考える。指名競争入札は、指名した者のうちから契約の相手方となる者を決定する行為であり、落札後、指名を受けていなかった者へ相手方が変更されて契約を履行するということは安易に許されるべきではない。
また株式会社産交ミック福岡支店は、事業譲渡契約に関し有資格業者であれば、春日市へ自らその事情や経緯などを、契約時期が切迫する中ではなく、速やかに報告して然るべきではなかったかと考える。
したがって、入札は契約の相手方となる者を決定する行為であることから、株式会社産交ミック福岡支店による本件入札の入札参加資格には疑義が生じており、このような場合、行政の執行機関としては、入札制度の公正性を第一義に考え、本件入札の効力を判断すべきである。 - 契約検査担当は、事後に事業譲渡を確認したものの、本件入札実施時は株式会社産交ミック福岡支店に参加資格もあり有効な入札であったと認識している。広報広聴担当は、1月24日に両社が来庁して事業譲渡の説明があったとの報告を受けた際、現在継続中の3月分の市報配布業務に支障がないようにとの意識が先行され、契約検査担当も同様に、本件入札に影響を及ぼす恐れがあるとの認識がなかったと思われる。本件契約には債権債務の譲渡禁止特約があることから、株式会社産交ミック福岡支店は春日市に対して譲渡の効力を一方的には主張できないものである。しかし、広報広聴担当および契約検査担当は、本件入札の有効性への疑義や懸念を持つこともなかったものと思われ、株式会社産交ミック福岡支店に対して、事業譲渡の説明が遅れた理由を尋ねたり、過失の有無などを確認したりするという通常行われるような事務を行っていない。現在の支店の配布員がそのまま移籍するという相手方からの説明により、両者間の事業譲渡についても概ね問題ないであろうと、差し迫った4月からの市報配布事業の遂行を重視した結果、弁護士相談による法的検討など慎重な手続きを取ることも考えられたにもかかわらず、(本監査委員による事情聴取後に弁護士相談を実施)事業譲渡を追認することで、入札結果にも契約にも問題ないとする判断をした。しかし万が一、入札参加資格を持たない業者によってこのような事業譲渡を意図的に行われ欺かれていた場合や、譲渡先業者の資格そのものに問題があった場合には、市報配布業務の継続も危ぶまれる事態となるリスクがあることを認識すべきではないかと思う。
本監査委員の事情聴取や事務局における事前調査において、同支店からの説明が遅れた理由などの確認がなされていないがその確認が必要ではないかとの指摘に対しても、広報広聴、契約検査の両担当とも、本件入札は何ら法的に問題がなく、市報等配布業務は市民への情報提供という観点から途切れることなく行われることが必要であることから、本件入札は有効であり、その結果、配布事業が円滑に実施されているので、今後においてもそのような確認の必要はないと判断していた。この入札の結果、事業開始前、入札当時に参加資格を持たなかった者に契約の相手方が変更されることに至った春日市の事務手続きやその後の対応については、不当でありこれらの手続きなどが今後の前例となりえることを看過することはできない。
平成29・30年度分の市報等配布業務について、契約保証人の了解を得ないで承継したことに問題はあるが、残り1カ月の期間について異例の承継承認がなされたことは、その事業継続の必要性、事務の切迫性などから一定の理解はできる。しかし、別途契約に関する必要な手続きを取るべきであったのではないかと思われる。さらに、平成31・32年度分の本件入札の業務契約についてまでも、同様に事業継続の必要性という理由から、平成31年度当初からの2カ年契約をそのまま引き継ぐことについては、本監査委員が法的意見を尋ねた弁護士の意見も参考として検討した結果、見直しなどの措置により、本件入札において生じた疑義を解消されるよう求める。 - そもそも、春日市は指名競争入札制度の趣旨や手続きを第一に考えて業務を行うべきであり、事業継続を優先した結果、何のための指名競争入札制度なのか、その存在意義が問われる重要な事態と言わざるをえない。
入札参加資格を入札当時に有しなかった者がその意図や過失の有無にかかわらず、業者間の事業譲渡を経ることによって、事実上入札に参加することを容認するような事態となったことは指名競争入札制度の根幹に関わる問題であり、その基本的な事務処理の執行を改めて検証し、リスクの管理・対策という適切な内部統制を構築されることを求める。
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