随時監査の結果について(令和元年7月17日付け01春監監第59号)

ページID:1004370  更新日 令和元年11月15日

01春監監第59号

令和元年7月17日

春日市議会議長 松尾 徳晴 様

春日市長 井上 澄和 様

春日市監査委員 光安 直樹

同 藤井 俊雄

随時監査の結果について(報告)

地方自治法(昭和22年法律第67号)第199条第5項の規定に基づき、監査を実施したので、同条第9項の規定により、その結果を報告します。

1 監査の種類

地方自治法第199条第5項の規定による財務に係る随時監査

2 監査の目的

春日市が指名競争入札によりなされた業務委託契約の締結が、地方自治法及び地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)等の法令に則って適正になされているか。

3 監査の実施期間

令和元年6月28日から令和元年7月16日まで

4 監査対象

地方自治法第214条および第232条の3の規定に抵触していると思われる、次の業務に係る指名競争入札および印刷製本業務契約を対象とした。

(1)業務名称

かすが議会だより印刷製本業務

(2)入札日

平成31年2月7日

(3)契約日

平成31年2月13日

(4)契約金額

単価0.61円(消費税および地方消費税を含まない)

(5)契約期間

平成31年2月14日~平成32年2月28日

(6)債務負担行為における各年度の委託金の支払限度額(契約書第9条)

  • 平成30年度:0円
  • 平成31年度:2,543,427円

(7)受注者

久野印刷株式会社

(8)債務負担行為

平成30年度設定限度額2,258,000円(平成31年度)

(9)担当所管

経営企画部財政課財政担当および契約検査担当

議会事務局議事課議事担当

5 監査方法

本監査は、対象業務に係る指名競争入札関係書類、契約書などの関係事績の提出を求め調査するとともに、併せて予算の査定事務および予算現計を把握すべき担当所管である経営企画部財政課財政担当、入札および契約事務の担当所管である同課契約検査担当ならびに、業務の予算要求および印刷費支払事務の担当所管である議会事務局議事課議事担当の関係職員の出席を求め、指名競争入札および契約締結に至った事情などを聴取した。

6 監査の結果など

(1)事務処理などの流れ(経過など)

当該印刷製本業務の契約締結までに係る事務の流れは、次のとおりであった。

  • ア 平成30年3月23日、春日市議会において平成30年度一般会計当初予算の可決成立。議会報印刷費の債務負担行為については、平成31年度の限度額を2,258,000円とする。
  • イ 議事課議事担当において、平成31年度当初予算要求にあたり、債務負担行為を設定していた当該印刷製本業務に関して、同限度額では臨時会号分の予算が計上されていないことが判明した。このため財政課財政担当に相談したところ、臨時会号分を含めた必要額を平成31年度当初予算に要求(財政課長査定平成30年11月13日~22日、内示平成30年12月18日~20日)するよう指示を受けた。しかし、印刷製本業務の入札の時期などについては検討しなかった。
  • ウ 平成31年1月9日、議事課議事担当で当該業務に関する指名競争入札の依頼の起案を行い、同月10日付で決裁完了、15日付で会計管理者の合議を受け、17日財政課契約検査担当に、入札手続きに係る事務処理のため事務が移された。なお、その際の起案においては、「31年度分から債務負担(30年度当初予算確保済み)」と記載しているが限度額の記載はなく、予算現額(31年度)2,544,000円、執行予定額2,543,427円(設計額となる内訳には定例会号単価0.62円、臨時会号単価1.16円で記載)としている。これは平成31年度当初予算要求額を記載した要求見積額である。
  • エ 財政課契約検査担当において、平成31年1月28日付けで、当該業務他9件に係る指名通知および入札会の開催に関する伺いが起案、指名された7者に対して同日付けで施行(通知)されている。
  • オ 入札は平成31年2月7日に実施されたが、指名をされた7者のうち3者は入札を辞退しており、4者による1回目の入札で単価0.61円(消費税および地方消費税を含まない)の最低金額を提示した久野印刷株式会社が落札した。この際の予定価格は単価0.643円であった。これらの落札額と予定価格を、入札依頼の起案の設計額などから総価を算出すると落札額2,381,449円、予定価格2,510,280円となる。
  • カ 財政課契約検査担当は、平成31年2月8日に契約締結伺の決裁を行い、同月13日付けで久野印刷株式会社を契約相手として、契約締結している。契約書第9条の債務負担行為における各年度の委託金の支払限度額には、平成31年度:2,543,427円と記載されているが、これは平成30年度当初予算で議決を受けた平成31年度の債務負担行為限度額2,258,000円と異なる。この契約書をもとに、議事課議事担当は、平成31年4月1日付で財務会計システム上支出負担行為をおこない、同日決裁が完了している。
  • キ 平成31年3月22日、市議会において平成31年度一般会計当初予算の可決成立。議会事務局事務費印刷費(議会報印刷費)予算現額2,544,000円。

(2)監査結果

議事課議事担当においては、3月定例会号かすが議会だより(195号・5月15日発行)を議会終了後速やかに発行するため、前年度の予算に債務負担行為を設定し、前年度中の印刷製本業務の入札実施を目指したものである。平成31年2月7日に実施された、かすが議会だより印刷製本業務の入札は、1ページあたりの単価による入札であったため、本監査にあたり提出された入札関係書類には総価が明示されたものがない。入札後に締結された契約書において、当初予算要求額を債務負担行為限度額としていることから、要求見積額を入札時の設計額としたことは明らかである。また財政課に対する事情聴取においても当初予算見積額を参考としたとの説明もあった。この総価を設計額(執行時期による消費税及び地方消費税率別に予定部数並びに回数)などから算出すると、落札額2,381,449円予定価格2,510,280円となり、ともに平成30年度に設定された債務負担行為限度額2,258,000円を超過している。普通地方公共団体が債務を負担する行為である入札は、予算で債務負担行為として定められた金額の範囲内で執行すべきものであることから、当該入札は、地方自治法第214条及び第232条の3の規定に抵触している。

指摘事項

以上の経過などから、次のとおり指摘する。

  1. 次年度以降にわたって当該地方公共団体に債務を生ずべき内容の契約を締結する場合、予算に基づくことが原則であり、これが債務負担行為として予算の一部となったものである。この予算を議会の議決に係らしめることによって、執行部の独走を防ぐことができる、議会による財務統制である。しかるに、次年度以降に執行される印刷製本業務の入札において、この限度額を超過する予定価格を設定し、限度額を超過した額で落札され、契約締結にまで当然に行われたことは、議会の議決権を否定し財務統制を排したものと受け取られかねない。予定価格の作成に関しては、法令などに別段の定めはなく、設計額にとらわれることはないが、予算額の範囲内で作成されなければならない。このように、予算額が設計額より不足する場合、予算額(債務負担行為額)が補正措置されるまで、当該年度中に入札を実施することはできなかったものである。したがって、平成31年2月7日に実施された、かすが議会だより印刷製本業務の入札は無効と言わざるをえない。
  2. 今回の印刷製本業務について、平成30年度に契約を締結するにあたっては、地方公共団体の支出の原因となるべき契約は法令または予算の定めるところに従い、これをしなければならないとしている地方自治法第232条の3の規定にも違反している。しかし、平成31年度当初予算において当該契約総価が予算措置されたことにより手続きの瑕疵は治癒されたものと解する。
  3. 財政課は、春日市の予算の編成および執行に関することなどを分掌しており、予算現計を常に把握することが求められている。所管課から予算編成および執行に関し相談を受けた際は的確な指導を行うべき立場にあり、さらに入札における予定価格の作成においても、議決を受けた予算である債務負担行為額の確認は必要最低限の事務であり、これを誤った今回の事態は、あってはならないものである。今後、適切な事務対応を行うよう強く求める。

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